親の葬儀が終わりました。次にやることは何ですか?(相続手続き②)

親族が亡くなると、通夜や葬儀、初七日法要などが終わるまでは慌ただしく時間が過ぎていきます。
しかし、葬儀が終わったからといって、すべてが終わるわけではありません。
実際には、葬儀後から本格的な手続きが始まります。
役所への届出、年金や健康保険の停止、銀行口座やクレジットカードの確認、生命保険の請求など、短期間のうちに対応しなければならないことが数多くあります。
また、この時期の対応を誤ると、相続トラブルや税務上の問題につながるケースもあります。
そこで本コラムでは、葬儀後に行う主な手続きと、その際に注意すべきポイントについて、わかりやすく解説します。
目次
1 役所関係の手続き
葬儀・初七日法要が終わると、少し気持ちが落ち着くかもしれません。
しかし、役所関係の手続きには期限があるものも多いため、できるだけ早めに動き始めることが重要です。
何度も役所へ足を運ぶのは大きな負担になるため、必要書類を事前に確認し、1日でまとめて進められるよう準備しておくと効率的です。
(1)世帯主変更届(14日以内)
亡くなった方が住民票上の「世帯主」だった場合には、新しい世帯主を決め、「世帯主変更届(住民異動届)」を役所へ提出する必要があります。
提出期限は死亡日から14日以内です。
ただし、
・残された世帯員が1人だけの場合
・「母と未成年の子」のように、次の世帯主が明らかな場合
には、届出が不要になるケースもあります。
手続きを行う前に、市区町村役場へ確認すると安心です。
(2)国民健康保険・介護保険の資格喪失届(14日以内)
故人が国民健康保険や後期高齢者医療制度、介護保険に加入していた場合には、資格喪失の手続きが必要です。
① 国民健康保険加入者の場合
提出先は、故人の住所地の市区町村役場です。
一般的には、保険年金課、高齢者福祉課などの窓口で手続きを行います。
返却が必要なものは以下のような書類です。
【返納する主なもの】
・健康保険証
・後期高齢者医療被保険者証
・介護保険被保険者証
なお、保険証を返却し忘れると後日郵送対応になることもあり、手間が増えるため注意しましょう。
② 会社員(社会保険)の場合
故人が会社の健康保険に加入していた場合には、勤務先が資格喪失手続きを行います。
遺族は健康保険証を勤務先へ返却します。
通常、会社側が死亡後5日以内に日本年金機構へ届出を行います。
会社との連絡が遅れると、扶養家族の保険切替にも影響することがあるため、早めに連絡することが重要です。
(3)「葬祭費・埋葬料」の請求
健康保険の資格喪失手続きを行う際には、葬儀費用の補助金も忘れずに申請しましょう。
これは自動的にもらえるものではなく、「申請しないともらえない制度」です。
① 国民健康保険・後期高齢者医療の場合
「葬祭費」として数万円程度が支給されます。
金額は自治体によって異なり、一般的には3万〜7万円程度です。
② 社会保険の場合
会社の健康保険では、「埋葬料(または埋葬費)」として原則5万円が支給されます。
【主な必要書類】
・葬儀の領収書
・会葬礼状
・振込口座情報
・申請者本人確認書類
期限があるため、できるだけ早めに申請しましょう。
(4)年金受給停止手続き
葬儀後の手続きの中でも、特に重要なのが年金の受給停止です。
年金は受給者が亡くなった時点で受給権が消滅します。
しかし、届出をしないと年金が振り込まれ続けてしまいます。
① 提出期限
年金の種類によって期限が異なります。
【提出期限】
・厚生年金:死亡後10日以内
・国民年金:死亡後14日以内
最近では、マイナンバー連携により死亡届の情報が自動共有されるケースもあります。
ただし、自治体や状況によっては手続きが必要になるため、念のため年金事務所へ確認するのが安全です。
② 遅れた場合のリスク
停止手続きが遅れると、本来受け取れない年金が振り込まれることがあります。
これを「過誤払い」といいます。過誤払い分は後日返還しなければなりません。
さらに、死亡を知りながら使い込んだ場合には、不正受給とみなされるリスクもあります。
「口座に入っていたから使ってよい」というわけではない点に注意が必要です。
③ 未支給年金の請求
年金は後払いの仕組みです。
そのため、故人が亡くなった時点で、まだ受け取っていない年金が残っていることがあります。
これを「未支給年金」といいます。
生計を同じくしていた遺族が請求できます。
【主な必要書類】
・戸籍謄本
・住民票
・振込口座情報
・死亡診断書のコピー
年金停止と同時に手続きすると効率的です。
2 役所以外で行う重要な手続き
この時期には、役所以外にも様々な手続きがあり、それぞれに注意すべき事項がありますので解説します。
(1)銀行口座の凍結と注意点
金融機関は、名義人が亡くなったことを把握すると口座を凍結します。
これは、相続人間のトラブル防止のためです。
凍結されると、「ATM引き出し」、「振込」、「口座引落し」などが停止されます。
① 慌てて預金を引き出さない
「凍結前に引き出しておこう」と考える方もいますが、安易な出金は大きなトラブルにつながります。
特定の相続人だけが預金を管理すると、他の相続人から疑念を持たれやすいためです。
また、税務調査で「使途不明金」とみなされるリスクもあります。
やむを得ず支払いを行う場合には、
・領収書
・出金記録
・メモ
などを必ず残しておきましょう。
② 預金の仮払い制度
現在は、遺産分割前でも一定額を引き出せる「仮払い制度」があります。
上限額は、以下のいずれか低いほうの金額になります。
・150万円
・預金残高÷3×法定相続分
葬儀費用や生活費に充てるための制度ですが、後の相続時に調整されます。
(2)クレジットカード・契約関係の確認
① クレジットカードをすぐ解約しない
死亡後すぐにカードを解約したくなるかもしれません。
しかし、公共料金や携帯料金などが自動引落しになっている場合があります。
先に解約すると、各種支払いが止まり、督促や延滞の原因になることがあります。
まずは利用明細を確認し、「何の支払いに使われているか」、「どの契約と紐づいているか」を整理しましょう。
② 公共料金の名義変更・解約
故人が一人暮らしだった場合は解約手続きを行います。
遺族が引き続き住む場合には、名義変更を行います。
【主な対象】
・電気
・ガス
・水道
・NHK
・インターネット回線
検針票や請求書を探すと契約番号が確認できます。
(3)スマホ・パソコンなどの「デジタル遺品」
近年、特に問題になっているのが「デジタル遺品」です。
スマホの中には、
・ネット銀行
・ネット証券
・電子マネー
・暗号資産
・サブスク契約
など、重要情報が大量に入っています。
しかし、ロック解除できず確認できないケースも増えています。
可能であれば、親族が集まっている時期に確認しておくことが重要です。
ただし、何度もパスワード入力を失敗すると完全ロックされる機種もあります。
解除できない場合には無理をせず、専門業者へ相談しましょう。
3 生命保険の確認
親族が亡くなった後は、生命保険の加入状況を早めに確認することが重要です。
生命保険金は比較的早く支払われることが多く、当面の生活費や葬儀費用に充てられる場合が多々あります。
① 確認したいポイント
以下のことが記載されている書類(保険証券など)を探しましょう。
・保険会社名
・契約者
・被保険者
・受取人
・保険金額
なお、保険証券が見つからない場合でも、「通帳の引落し履歴」や「クレジットカード利用明細」から保険会社が分かることがあります。
② 保険金は「受取人固有の財産」
死亡保険金は、原則として「受取人固有の財産」とされます。
そのため、遺産分割の対象にならないケースが多いです。
ただし、高額な保険金によって相続人間の不公平が大きくなる場合には、トラブルになることもあります。早めに情報共有することが大切です。
4 葬儀後に整理しておきたい資料
今後の相続手続きをスムーズに進めるため、以下の資料を整理しておきましょう。
【整理したい主な資料】
・通帳
・証券会社資料
・生命保険証券
・固定資産税通知書
・不動産権利証
・借入資料
・年金資料
・クレジットカード明細
「どこに何があるか」を一覧化しておくと、その後の相続手続きが大幅に楽になります。
5 まとめ
葬儀後は一段落したように感じますが、実際にはここから多くの重要手続きが始まります。
特に、健康保険、年金、銀行、生命保険などには期限があるものも多く、対応が遅れると返還問題や相続トラブルにつながることがあります。
また、故人の財産や契約関係を整理せず放置すると、後になって「知らない借金」や「未解約の契約」が見つかるケースもあります。
悲しみの中ではありますが、家族間で情報共有を行い、必要に応じて税理士、司法書士、弁護士などの専門家へ相談しながら、少しずつ整理を進めていくことが大切です。
