リバランスってどうすればいいですか?

資産運用を始めるとき、多くの人は「どのくらい株式に投資しよう」、「債券はどのくらいにしよう」といった具合に、自分なりの投資計画を立てます。 

これはまるで、家を建てるときに設計図を描くようなものです。
設計図があるからこそ、安定感のある家が建つように、投資でも計画があるからこそ、長期的に安心できる運用ができるのです。 

ところが、投資を続けていると、時間の経過や市場の変動によって、最初に決めた資産バランスがどんどんズレていきます。
このズレを調整する作業が「リバランス」です。 

このコラムでは、リバランスとは何か、どんなメリットがあり、どんなことに注意するべきかを、ライフスタイルの変化も踏まえながらわかりやすく解説していきます。 

1 一般的なリバランスとは 

一般的にリバランスとは、「元々の資産配分に修正すること」をいいます。
最初に決めたポートフォリオ(株式〇%、債券〇%、現金〇%など)からズレてしまった比率を、元に戻すことを指します。 

たとえば、株式50%、債券50%で運用を始めたとしましょう。
株価が好調に推移して株式の価値が増えた結果、気づけば株式60%、債券40%という比率になっていたとします。
この状態は、一見すると「儲かっているのだから良い」と思えるかもしれません。 

しかし、これでは当初の計画よりもリスクが大きくなってしまっています。
株式の割合が多くなれば、その分価格変動の影響も受けやすくなっているからです。 

そこで、増えすぎた株式を一部売却し、その資金を債券に回すことで、再び株式50%、債券50%に戻す。
これがリバランスの基本的な考え方です。 

つまり、リバランスは「投資の軸をブレさせないための調整」です。
市場の動きに翻弄されるのではなく、自分が決めた資産配分に忠実でいるための大切なプロセスなのです。 

2 ライフスタイルの変化とリバランスの関係 

リバランスを考えるうえで大切なのは、市場の変化だけではありません。
私たち自身のライフスタイルの変化も、資産配分を見直す大きな理由になります。
これが、「もう一つのリバランス」です。 

たとえば、20代や30代の若い世代では、長期的に資産を増やすことを目的として、株式比率を高めに設定することがよくあります。
一時的に相場が下がって損失を抱えても、まだ働いて収入を得られる時間が長いため、リスクを取りやすいのです。 

ところが、40代・50代になってくると、家族の教育費や住宅ローンの返済など、資金が必要になるタイミングが増えてきます。
このときには「大きなリスクを避けたい」という考え方が強まり、債券や現金の比率を増やすリバランスが必要になることもあります。 

さらに、60代以降の定年退職後には、投資の目的そのものが「資産を増やすこと」から「資産を取り崩しながら生活に充てること」へと変わってきます。
この段階では、価格変動の大きい株式を減らし、より安定的な資産へとシフトするリバランスが重要になります。 

この場合のリバランスは「自分の人生のステージに合わせて投資の設計図を描き直す作業」といえます。 

3 リバランスのメリット 

リバランスは、一見すると単なる資産の入れ替え作業のように思われがちですが、実際には投資の成果や安心感に大きく関わる重要なプロセスです。 

ここでは、リバランスを行うことによって得られるメリットを見ていきましょう。 

(1)リスクコントロールができる 

資産配分が最初の計画から崩れると、自分が意図していないリスクを抱えてしまうことがあります。
たとえば、株式50%・債券50%で始めたポートフォリオが、株式市場の好調により70%・30%になってしまうと、当初よりもリスクの高い状態になっています。
リバランスを行えば、再び50%・50%に戻すことができ、意図した範囲でリスクをコントロールできます。 

これは、長期的な資産運用において「大きな失敗を避ける」ために欠かせない効果です。 

(2)感情に左右されない投資ができる 

人間は、どうしても「上がっている資産は手放したくない」、「下がっている資産は買いたくない」などと感情が生まれるものです。 

ところが、リバランスはあらかじめ決めたルールに従って資産を調整する仕組みであるため、自分の感情に流されず、機械的に行動できるようになります。 

これにより「冷静さを保ちながら投資を続ける」という、本来難しいことを可能にすることができます。 

(3)長期的に安定した成果につながる 

投資の世界では「いかに利益を増やすか」よりも「いかに損を減らすか」が成功の鍵だと言われることがあります。
リバランスを繰り返すことで、資産の値動きを安定させ、大きなブレを抑えることができます。 

短期的には「値上がりした資産を売る」ために一時的な利益を逃すこともありますが、長期的に見れば安定した成長が期待でき、結果的に資産を守り育てることにつながります。 

(4)資産の売買の判断が明確になる 

投資において難しいのは、「いつ売ればいいのか」、「いつ買えばいいのか」という判断です。リバランスはこの判断をシンプルにしてくれます。 

たとえば、「株式が目標よりも増えすぎたら売る」、「債券の割合が減っていたら買う」といったルールに従うだけです。 

複雑な予測や相場観に頼る必要がなくなり、結果的に投資行動が安定します。 

(5)ライフプランに沿った運用ができる 

リバランスは単なる数字合わせではなく、自分のライフステージに合わせて投資を調整する機会にもなります。 

若いうちはリスクを取りやすくても、年齢を重ねると安定性を重視する必要があります。
そのときにリバランスを行うことで、自然と「今の自分に合った投資配分」に整えることができます。 

つまり、リバランスは資産運用とライフプランをつなぐ架け橋のような役割を果たすのです。 

4 リバランスをするときの注意点 

資産運用におけるリバランスは、メリットが多いですが、やり方を誤るとコストが増えたり、想定外のリスクを抱えたりする可能性があります。 

ここではリバランスを行う際に意識しておきたい注意点をご紹介します。 

(1)頻度を適切に設定する 

リバランスは頻繁に行えば良いというものではありません。
毎月のように実施すると売買コストや税負担が増え、逆に運用効率を損なってしまいます。
一方で、長く放置すると資産配分が大きく崩れ、リスク許容度を超える運用になりかねません。 

一般的には年1~2回、もしくは基準とする配分から大きく外れたときに実施するのが現実的です。
自分のライフスタイルに合わせ、無理のない頻度を決めておくことが大切です。 

(2)コストや税金の影響を考える 

リバランスのために資産を売却すれば、売買手数料や税金が発生します。
特に株式や投資信託の売却益には約20%の税金がかかり、思った以上にコストが膨らむこともあります。
こうした負担を軽減するためには、新規資金を投じる際に配分を整える方法やNISAなどの非課税口座を活用する工夫が有効です。 

リバランスの目的が資産配分の維持である以上、余計なコストでリターンを削られないように意識することが必要です。 

(3)ライフイベントを意識する 

リバランスは単なる数値調整の作業ではなく、ライフプランと結びつけて考えることが大切です。
結婚、住宅購入、子どもの教育費、退職といったライフイベントでは、必要なお金の額やリスクの取り方が変化します。 

たとえば、退職を控えた時期にはリスク資産を減らし、安全資産の割合を増やす判断も必要になるでしょう。こうした節目ごとにリバランスを行えば、資産運用がより現実的に人生設計を支えるものになります。 

(4)市場の短期的な動きに振り回されない

 相場が急上昇や急落をしたとき、「今すぐリバランスすべきかも」と焦る人は少なくありません。
しかし、短期的な値動きに過剰に反応すると、かえって投資成果を損なうリスクがあります。 

リバランスの本来の目的は長期的な資産配分の安定化です。
市場の一時的な騒ぎに左右されず、あらかじめ決めたルールに従って冷静に行うことが成功の秘訣です。 

(5)投資商品の特性を理解して行う 

リバランスは、「比率を調整するだけ」と思われがちですが、実際には投資対象のリスク特性を理解した上で判断する必要があります。 

たとえば、先進国株式と新興国株式では値動きの大きさが違い、国内債券と海外債券では為替リスクの有無が異なります。
ただ機械的に割合を合わせるだけでは、想定外のリスクを抱えてしまうことがあります。 

売却や買い増しを行う際には、各資産の特性を踏まえて慎重に検討しましょう。 

5 まとめ 

リバランスは、一言でいえば「投資の軸を守るための大切な作業」です。
市場がどう動こうと、自分の資産配分を守ることで、余計なリスクを避け、長期的に安定した成果を得ることにつながります。 

また、ライフスタイルや人生のステージが変われば、その都度リバランスを行い、自分の生活に合った投資方針へと調整することも欠かせません。 

「投資は放っておくもの」と思われがちですが、実際には定期的な点検と調整が必要です。
家のメンテナンスを怠れば建物が傷むように、資産運用もメンテナンスを怠れば思わぬリスクにさらされます。リバランスはそのメンテナンス作業にあたります。 

長期的に資産を育て、安心して未来を迎えるために、ぜひ「リバランス」という習慣を取り入れてみてください。