ポートフォリオを組もう!
前回のコラムでは、資産配分の重要性についてお話ししましたが、今回は「どの金融商品を選び、どのように組み合わせるか」と「長期的にどのように管理するか」について解説します。
初めての投資でもわかりやすく、シンプルにお伝えしていきますので、安心してください。
実効性のあるポートフォリオの組み方について
投資を始める際、どんな商品を買えば良いのか、どれくらいの数を組み合わせればいいのか、迷うことが多いと思います。
そこで、初心者がポートフォリオを作る際に気を付けたい3つのポイントをお伝えします。ここでは投資信託を例に説明します。
- 低コストの商品を選ぶこと
投資を長期間続けるうえで、まず最初に考えるべきはコストです。
コストが高いと、利益がどんどん削られてしまうからです。
たとえば、証券会社の手数料や口座維持費、売買の手数料、さらには商品の管理費用などがコストとしてかかります。
仮に、年間で資産の3%のコストがかかる場合、5%の利益が出ていたとしても、手元に残るのは2%です。
この差が、長期運用では大きな違いを生みます。
例えば、100万円を年間5%の利益で20年間運用すると、265万円になりますが、コストがかかって2%の利益しか得られない場合、148万円にしかなりません。117万円の差が生まれてしまうのです。このような事態を避けるためにも、できるだけコストの低い商品を選びましょう。 - 商品の内容を理解すること
投資経験が少ないと、自分が買った投資信託が具体的にどのようなものか、よくわからないことがあります。
例えば「国内株式に投資する」といっても、その内容はさまざまで、大企業に投資するのか、中小企業にも投資するのか、場合によっては債券も混ざっている場合もあります。
このため、同じようなタイプの投資信託を複数購入してしまうと、十分な分散効果が得られず、リスク管理がうまくいかなくなることがあります。
また、運用が上手くいっていない投資信託を知らずに買ってしまうこともあるかもしれません。
過去の運用実績がしっかりしていて、できれば10年以上、少なくとも5年以上は運用されている投資信託を選ぶようにしましょう。
運用報告書などを確認し、投資対象や過去のパフォーマンスをしっかり理解してから投資することが大切です。 - 資産管理を簡単にすること
投資初心者の人が投資信託を購入しようとした時にありがちなのが、2つあります。
1つめが、何を買えばいいのかわからないというパターンです。
現在購入可能な投資信託は5000本以上あり、NISAのつみたて投資枠の対象だけでも300本あります。
そのうち、日経平均株価に連動するインデックス投信は24本もあります。どれを買えばいいのかわからなくなるのもわかります。
もう1つが、いろいろな情報を参考にして購入していたら、保有している投資信託の種類が多くなってしまうパターンです。
投資信託はどんどん組成されていきますので、出だしが好調だったり、テーマが話題になったりする投資信託は買いたくなると思います。
しかし、これでは資産全体や個々の投資信託の変動などのチェックが難しくなります。
投資初心者におすすめなのは、各資産クラス(国内株式、国内債券、海外株式、海外債券)に対して1つずつ、インデックスファンドを選ぶことです。
具体的には、国内株式ならTOPIXや日経平均に連動するファンド、国内債券ならNOMURA-BPI総合、海外株式ならMSCIコクサイインデックス、海外債券ならFTSE世界国債インデックスに連動するファンドを選ぶと良いでしょう。
これらのインデックスファンドはコストが低く、長期的な運用に適しています。
各カテゴリーで1本ずつに絞ることで、資産管理も簡単になりますし、分散投資も自然にできるので、リスクを抑えながら安定したリターンを目指すことができます。
商品の絞り込みに当たっては、コスト、運用期間や純資産額を比較してお気に入りの1本を選んでください。
この4本だけで、国内全体または世界全体に分散の効いたポートフォリオを組むことができます。
これだけで、リスクを抑えながら投資のプロにも負けないリターンを目指せる運用ができると思います。
投資信託を絞り込むことでこの後の資産管理がグッと楽になりますので、まずはお気に入りの1本への投資に集中してください。
このように、実効性のあるポートフォリオを組むためにはポイントがありますが、さほど難しいことではありません。
まずは少額でいいので、一歩を踏み出してみましょう。
ここまでで、4種類の投資信託を購入し、あなたは投資家としての第一歩を踏み出しました。
おめでとうございます!
ここからは、投資家としてどのように運用を進めていけば良いのか、運用の方法や、リバランスの重要性についてお話しします。
投資信託の運用について
投資信託の運用は、実はとてもシンプルです。運用方法といっても、決めたルールに従って、余裕資金で淡々と投資信託を購入するだけです。
「そんなに簡単でいいの?」と思うかもしれませんが、これが投資信託の大きな強みなのです。
個別株式の場合、銘柄ごとに上がったり下がったりするので、その都度判断が必要です。
しかし、どの株が上昇し、どの株が下落するかを事前に正確に予測することは難しいです。
もし、値下がりする銘柄を選んでしまったら、大きな損失を出してしまうこともあります。
一方、投資信託は多くの株式や債券を一つの商品としてまとめたものです。
これにより、値上がりする銘柄と値下がりする銘柄が相殺され、全体としてリスクを抑えつつ、長期的な利益を目指すことができます。
もちろん、短期的には価格が上がったり下がったりすることもありますが、歴史的に見ると、長期的には利益が得られる傾向にあります。これに加え、複利効果によって、時間が経つほど資産が増えていくのです。
つまり、投資信託の運用で大切なポイントは2つ。「ルールに従って購入すること」と「保有し続けること」です。
リバランスの重要性
ポートフォリオは資産配分に基づいて作られています。
資産運用を続けていくと、投資している資産の価格が変動するため、最初に決めた配分が崩れてしまうことがあります。
そんな時に必要なのが「リバランス」です。リバランスとは、崩れた資産配分を元のバランスに戻すことを指します。
例えば、あなたが100万円を国内株式、国内債券、海外株式、海外債券にそれぞれ25%ずつ投資したとしましょう。
数年後、投資の成果によって国内株式が33万円、国内債券が20万円、海外株式が40万円、海外債券が27万円に増えたとします。
この場合、各資産クラスの割合がバラバラになっていますね。このままだと、リスクやリターンのバランスが崩れてしまいます。
そこで、リバランスを行って、各資産クラスの金額を30万円に戻す必要があります。
リバランスの方法
リバランスには主に2つの方法があります。
1つ目は、「売買によるリバランス」です。
これは、一部の資産を売却し、他の資産を購入することでバランスを取る方法です。
例えば、国内株式を3万円、海外株式を10万円売却し、その資金で国内債券と海外債券をそれぞれ購入します。
この方法のメリットは、一度の取引でリバランスが完了する点です。ただし、売却時に税金が発生する場合があるため、その点に注意が必要です。
2つ目は、「差分補充によるリバランス」です。
この方法では、売却はせず、不足している資産クラスに新たに資金を投入してバランスを整えます。
例えば、海外株式が40万円に達しているので、それに合わせて他の資産クラス(国内株式、国内債券、海外債券)を追加購入します。
この方法のメリットは、売却による税金が発生しないことです。
ただし、一度に多くの資金を用意する必要があるため、完了するまでに時間がかかることがデメリットとなります。
リバランスのタイミング
リバランスは頻繁に行う必要はありません。
資産総額が3000万円以下であれば、年に1回のチェックで十分です。
資産総額が3000万円以上の場合でも、半年に1回程度の確認で問題ありません。
また、リバランスを行う目安として、各資産クラスが5%ほど増減した場合を基準にすると良いでしょう。
リバランスを定期的に行うことで、リスクを適切に管理し、長期的な運用で安定したリターンを狙うことができます。
投資信託の運用は簡単で継続が鍵
投資信託の運用は、相場の変動に一喜一憂せず、淡々とルールに従って投資を続けることが重要です。
さらに、年に1~2回のリバランスを行うことで、ポートフォリオを健全に保ち続けることができます。
この運用スタイルは、投資初心者や、日々の仕事や家庭で忙しい方にとっても最適です。
頻繁に相場を確認したり、売買のタイミングを気にする必要がないため、精神的な負担も少なく、長期的に続けやすいのが特徴です。
まとめ
これまでに学んだことを元に、自分のルールに従って淡々と投資を続け、適切なタイミングでリバランスを行うことが、成功への鍵です。最初は少し難しく感じるかもしれませんが、シンプルなルールに従って実行することで、誰でも効果的な資産運用を行うことができます。
ぜひ、自分の資産配分とポートフォリオを守りながら、長期的に大きな資産を築いていきましょう。