分散投資ってどうすればいいの?
資産運用を始めるとよく耳にする言葉に「分散投資」というものがあります。
これは、リスクを減らすために重要な考え方です。
例えば、よく使われる例えに「卵を一つのカゴに盛るな!」という言葉があります。
これは、もし一つのカゴに全ての卵を入れていたら、そのカゴを落とした時に全ての卵が割れてしまうから、いくつかのカゴに分けてリスクを減らそう、という意味です。
ここまでは理解しやすいと思います。
しかし、具体的にどうやって資産を分散すればいいのか、悩む人も多いでしょう。
そこで、今回は分散投資について考えてみましょう。
分散投資はなぜ良いのか?
投資資産を分散する一番のメリットは、ある資産の価値が下がった時に、他の資産が安定していれば、全体の資産が大きく減らないことです。
逆に、ある資産の価値が上がったとしても、他の資産が下がってしまうと、上昇による利益を最大限に得られません。
これが分散投資のデメリットです。
それでも分散投資が推奨されるのは、長期的な立場で資産運用をした時に、複利効果のおかげで資産を安定的に増やすことができるからです。
これであれば、投資初心者であっても投資のプロにも負けない結果を得ることができます。
ただし、短期間で売買を繰り返す人には、この分散投資は投資効率が下がってしまうため、おすすめできません。
この場合は、自分の投資スキルを信じて、銘柄を絞って集中投資が望ましいと思います。
<分散投資の方法>
分散投資と聞くと、複数の銘柄に投資することだと思うかもしれませんが、それだけではありません。
分散の方法には他にもいくつかの種類があり、それらを組み合わせることでさらにリスクを減らし、安定した運用ができます。
では、分散投資の方法について見ていきましょう。
・時間の分散
1つ目は、購入するタイミングを分ける方法です。
1. 分割購入のメリット
株式や投資信託などの投資資産は、価格が日々変動します。
利益を出すためには、「安く買って、高く売る」ことですが、実際にはいつが安い時期か、いつが高い時期かは事前にわかりません。
あとで振り返ったときに初めて、「ここが一番安かった」ということがわかります。
また、安いと思って買ったら、その後下落してしまい、大きな損失が生じたということはよく聞く話です。
そのため、一度に全額を投資するのではなく、何度かに分けて購入することで、高値で買ってしまうリスクを減らせます。
一例を挙げます。
今、手元に30,000円を持っていて、ある投資商品を3単位購入しようとしています。
その後、その価格は、10,000円⇒9,000⇒8,000円⇒9,000円の順で変動したとします。
最初に全額を一括投資して3単位を購入した場合には、損益0⇒3,000円損失⇒6,000円損失⇒3,000円損失の順で損益が推移します。
毎回1単位ずつ購入した場合には、損益0(残金20,000円)⇒1,000円損失(残金11,000円)⇒3,000円損失(残金3,000円)⇒損益0(残金3,000円)の順で損益が推移します。
この例では、最初に一括で買った場合には最終的に損失が発生し、分割して買った場合には購入平均単価が下がり損失はなくなりました。これが分割購入のメリットです。
2. 分割購入のデメリット
しかし、分割購入にもデメリットがあります。
もし最初に購入した後、ずっと価格が上がり続けた場合は、一括購入の方がより多くの利益を得られます。
分割購入だと、その間に価格が上がってしまうため、購入平均単価が高くなってしまうからです。
3. 購入方法の判断基準
このように、購入後の価格変動の状況によってメリットとデメリットに分かれますが、これから先の価格変動の状況はわかりません。
下落が心配で購入をためらうことが多い人は、購入タイミングを分けたほうが安心して購入できると思います。
投資信託の購入の場合などは、定期・定額の積立、いわゆる「ドルコスト平均法」を使って購入すると、価格変動に合わせて自動的に数量調整するので、購入平均単価を下げることができ、リスクを抑えることができます。
なお、価格が上がる場合には一括購入が効果的ですが、もし下がった場合には損失が大きくなるので、余程の確信がない限り分割して購入したほうがいいと思います。
・投資先・投資地域の分散
2つ目は、投資する対象や地域を分ける方法です。
1. 投資先の分散
1つの銘柄に全てを投資するのはリスクが高いです。
もしその銘柄が大きく下がった場合、損失が大きくなってしまいます。
そこで、複数の銘柄に分散投資することで、1つの銘柄が下がっても他の銘柄がカバーしてくれるため、リスクを軽減できます。
たとえば、投資信託を使えば少額でも複数の銘柄に投資でき、リスクを抑えながら利益を目指すことができます。
個別株式を購入する場合がその典型例です。
1つの銘柄だけに投資すると、その会社が倒産したり、株価が急に下がった場合、大きな損失を受けるリスクがあります。
そのため、複数の銘柄に分けて投資することで、1つの銘柄が下がっても他の銘柄でカバーでき、リスクを減らすことができます。
これは「たまごを1つのカゴに盛るな!」という有名な格言にあてはまります。
分散投資には、株価が上がったときに得られる利益が少なくなるというデメリットがありますが、複数の銘柄に投資しておくことで、リスクを抑えつつ安定した利益を目指すことができます。
長期的に見れば、株価が上がる銘柄もあるので、少しずつ利益を積み重ねられる可能性が高くなります。
また、個別の銘柄をたくさん買うには大きな資金が必要ですが、投資信託を利用すれば、少額でも多くの銘柄に分散投資ができるため、リスクを抑えながら利益を目指すことができます。
2. 投資地域の分散
投資をするときには、投資先の国や通貨のリスクも考える必要があります。ここでは、カントリーリスクと為替変動リスクについて説明します。
・ カントリーリスクの分散
世界の経済はつながっているため、例えばアメリカの株価が下がると、他の国の株価も影響を受けて下がる傾向にあり、世界経済の流れはボーダレスになっているといえます。
しかし、国によっては、政治の情勢が不安定だったり、経済基盤が弱かったりするため、その国の資産価値が大きく下がることがあります。
このようなリスクが高い国の債券は、金利が高く魅力的に見えるかもしれませんが、利息が支払われなかったり、投資したお金が戻ってこなかったりするリスクもあります。
投資の初心者やプロでない場合は、このような国への投資は避けるか、少額にとどめ、経済が安定している国に投資する方が安全です。
・ 為替変動リスクの分散
普段、私たちは日本円で生活していますが、外貨預金や海外の株式に投資する場合、日本円を外国通貨に交換する必要があります。
この際、為替の変動に注意が必要です。
例えば、1ドル=150円のときに15,000円で100ドルを預金したとします。1年後に1ドル=135円に円高が進むと、100ドルは13,500円にしかならず、結果として10%損をすることになります。
逆に、円安になれば得をすることもありますが、為替リスクは常に存在します。
為替リスクを抑えるためには、海外資産に投資する際、リスクを許容できる範囲で資産を分散して管理することが重要です。
3. 投資商品の分散
投資には価格の変動など様々なリスクが伴いますが、そのリスクに対応するために、投資商品を分散することが大切です。
これを「ポートフォリオ」と呼び、資産運用の基本です。非常に重要な事項ですので、別のコラムでじっくり考えたいと思います。
このコラムでは、投資商品を分散する時に注意すべき、2つのポイントについて説明します。
・ 相関関係が低い商品を選ぶ
異なる動きをする、もしくは逆の動きをする投資商品を組み合わせることで、リスクを分散させることができます。
例えば、株式と債券はよく対照的な動きをします。一般的に、株価が下がると債券価格が上がるため、株価の下落リスクを和らげることができます。
また、円建て資産(日本円で運用される資産)と外貨建て資産を持つことも効果的です。
円高のときには外貨建て資産の価値が下がりますが、同時に円建て資産の価値が上がることで、全体のバランスを保つことができます。
このように、異なる種類の資産を組み合わせることで、安定した資産運用が可能になります。
・ リスク許容度に応じた保有割合の調整
分散投資をする際、もう一つ大事なのは保有する割合です。
これは、自分がどれだけリスクを取れるか(リスク許容度)によって決まります。
例えば、「大きな成長は期待しなくてもいいから、安全に運用したい」という人は、債券や預貯金の割合を増やすのが一般的です。
反対に、「多少のリスクを取っても、成長を期待したい」という人は、株式などのリスクが高い資産の割合を多めにして、資産の増加を目指します
投資には価格の変動が伴うため、大きな損失を被る可能性もあります。
しかし、長期的に資産をうまく分散して持つことで、リスクを抑えながら資産を増やすことが可能です。
目先の値動きに惑わされず、長い目で見て自分の資産をどのように分けるかをしっかり考えることが大切です。