やっぱり長期投資がいいの?

本やネットで「投資をするなら長期投資が良い!」という情報を見たことがある人は多いでしょう。
しかし、長期投資がなぜ良いと言われるのか、具体的にはわからないという方もいるのではないでしょうか?
そこで今回は、長期投資のメリットと注意点についてわかりやすく解説します。

長期投資とは?
長期投資とは、文字通り長い期間にわたって行う投資のことです。
では、「長期」とはどのくらいの期間なのでしょうか?

明確な定義はありませんが、一般的には10年以上を指します。
今40歳の人なら50歳になっているわけですから、10年が長期というのもうなずけます。

長期投資のポイントは、短期的な値動きに一喜一憂せず、投資対象の将来的な成長に期待して投資することです。
そのため、株式などを購入した後は、長期間保有し、値上がり益や配当金を狙うのが一般的です。

【長期投資のメリット】

1 複利効果で雪だるま式に増える
複利効果とは、運用して得た利益を再投資し、元本と利益を合わせた金額に対して次の利益が生まれることです。
これを繰り返すと、利益が次の利益を生み、時間が経つほど雪だるま式に利益が大きくなります。
例えば、100万円を年利5%で運用した場合、単利(利益を再投資しない)の場合と複利(利益を再投資する)の場合で、以下のような違いが出ます。

10年間の利子合計額:単利では50万円、複利では62.9万円
20年間の利子合計額:単利では100万円、複利では165.3万円
30年間の利子合計額:単利では150万円、複利では332.2万円

このように、運用期間が長くなればなるほど、利子が膨らんで運用益が大きくなっていきます。
30年間では、利子の合計額が倍以上になっています。

これが、長期投資の最大の強みで、投資は早く始めたほうがいいといわれるゆえんです。

2 日々の値動きに左右されにくい
株式市場などは日々値動きがあり、大きく変動することもあります。
投機のように、短期的な価格変動の価格差を利用した運用では、日々の値動きがとても重要で、敏感に反応する必要があります。
一方で、長期投資は10年以上先を見据えた投資ですので、世界経済全体や政治的な変動などの大きな潮流が投資判断に影響するため、株価等の日々の値動きはあまり重要視されません。
そのため、日々の細かい値動きに一喜一憂する必要が少なく、ゆったりと落ち着いて運用できます。

3 低コストで運用できる
株式や投資信託を売買する際には、一般的に購入手数料や売却手数料がかかります。
これらの手数料は料金プランによりますが、1回だけであればさほど気にする必要がない程度の金額です。
しかし、頻繁に取引を繰り返す人は売買回数が多くなるので、売買手数料が高額になり、利益額が手数料分だけ減少してしまいます。
長期投資では買って保有する「バイアンドホールド」が基本なので、手数料を抑えることができ、コスト面でも有利です。
これは、個人投資家だけでなく、投資のプロであるファンドマネージャーもなるべく取引回数を減らして、利益の確保に努めています。

4 積立投資との相性が良い
積立投資とは、定期的に一定の金額を継続して投資する方法です。
積立投資の最大のメリットは、一定額を購入することで、価格が安い時には多くの数量を、価格が高い時には少ない数量を購入することができることです。
これによって、購入単価を下げることができます。この方法は、「ドルコスト平均法」といいます。

例えば、毎月同じ金額(3万円)ずつ積立投資をした場合と毎月同じ数量(3単位)を購入した場合とで比較してみましょう。

 単価 定額積立(月3万円) 定数積立(月3単位) 
1か月目 10,000円 3単位 3単位 
2か月目 5,000円 6単位 3単位 
3か月目 15,000円 2単位 3単位 
  11単位(90,000円) 9単位(90,000円) 

定数積立が購入単価10,000円であったのに対して、定額積立は購入単価 8,182円となりました。
その理由は、定額積立は2か月目に購入単価が下落し多くの数量を購入できたこと、3か月目に購入単価が上昇し少ない数量の購入で抑えられたためです。

このように、価格が変動する金融商品を購入する場合に、ドルコスト平均法で購入すると購入単価が抑えられるため、売却した時により多くの利益を得ることができます。
長期投資においては、とても有効な購入方法です。

実際に長期投資をした場合にどのくらい利益が出るのか気になるところです。
将来がそうなるかはわかりませんが、過去のデータで見てみましょう。

<長期投資の実績>
過去20年間(2004年~2023年)のデータを見ると、以下のようなリターンが得られています。

 20年後 年平均リターン 参考指標 
日本債券 1.3倍 1.3% NOMURA-BPI総合 
外国債券 2.2倍 4.0% FTSE世界国債index 
日本株式 3.4倍 6.3% TOPIX 
外国株式 6.1倍 11.0% MSCI-KOKUSAI 
金 6.7倍 11.6% 店頭小売価格 

(※利子・分配金は再投資をし、税金・手数料は含みません。)

ここ20年の世界の株式市場は好調でした。
今後の20年もこのようになるかわかりませんが、長期的に投資を行うことで、複利効果により大きな資産を築ける可能性があることがわかります。

長期投資のメリットは大きいですが、注意すべき点もあります。ここでは、注意点とその対策を整理します。

【長期投資の注意点とその対策】
1 結果が出るまで時間がかかる
長期投資は、企業の成長に期待して行うため、成果が見えるまで数年かかることが多いです。
また、購入後にそのまま保有するので、目立った動きが少なく、地味に感じるかもしれません。

種をまいてすぐに花が咲くわけではなく、時間をかけてじっくりと成長を見守る必要があります。

<対策>
・ 焦らない
短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な視点を持つことが大切です。
・ 相場から離れる
日々の値動きが気になる場合は、あまり頻繁にチェックしないことも有効です。
・ ルールを守る
あらかじめ決めた投資計画に基づいて、淡々と投資を続けていきましょう。

2 途中でやめると効果が減る
長期投資の魅力の一つは「複利効果」です。これは、得た利益がさらに利益を生むことで資産が増えていく仕組みです。
しかし、途中で投資をやめてしまうと、この複利効果が十分に発揮されません。

売却せずに投資を続ければ、資産は複利効果で成長し続けます。

<対策>
・ 継続は力なり
何かあったとしても、投資を続けることを第一に考えましょう。
・ 柔軟に対応
続けるのが難しい場合は、積立額を減らしたり、一時的にストップしたりするなど、状況に合わせて投資方法を調整しましょう。
・ 売却は最後の手段
売却してしまうと、複利の効果が途絶えてしまいます。

3 必ずしも利益が出るわけではない
個別の株式では、数年間持ち続けても思うように値上がりせず、配当も出ないこともあります。
中には、売却タイミングを逃して「塩漬け株」となってしまうこともあります。

<対策>
・ 分散投資
複数の銘柄や投資信託に分散投資することで、リスクを減らすことができます。
・ プロに任せる
投資信託は、プロが様々な銘柄を選んで運用してくれるので、初心者の方でも安心して始められます。

長期投資は、資産運用の効果的な方法ですが、注意すべき点もあります。
また、決して一攫千金の投資方法ではありません。

投資計画や注意点を事前にしっかり整理し、焦らず、じっくりと取り組むことで、数年後、さらには数十年後に良い成果を期待できるでしょう。