相続税の計算方法を教えて!

相続税の計算と聞くと、「非常に複雑で、専門家に任せないと一歩も進めない」というイメージを持つ方が多いかもしれません。
しかし、実はその構造は非常に論理的で、大きく分けて4つのステップを順番に登っていけば、初心者の方でも全体像を把握することができます。 

このコラムでは、初めて相続に直面する方に向けて、相続税計算の仕組みをわかりやすく・丁寧に解説します。 

1 相続税計算の全体像 

具体的な計算に入る前に、まず理解しておきたい重要なルールがあります。
それは、日本の相続税が「法定相続分課税方式」という独特の仕組みを採用していることです。 

多くの人は「もらった財産にそのまま税率をかければいい」と思いがちですが、実際には「一度、法律で決められた割合(法定相続分)で分けたと仮定して、家族全員分の税金の総額を出し、それを後で分配する」という手間のかかる手順を踏みます。 

これは、財産の分け方によって家族全体の税負担が極端に変わらないようにするための「公平性のためのルール」です。 

では、このルールに基づいた4つのステップを見ていきましょう。 

【ステップ1】「相続財産の総額」を計算する 

最初のステップは、「亡くなった人(被相続人)から受け継ぐ財産は結局いくらなのか?」を計算することです。
単に銀行の残高を足すだけでなく、プラスのもの、マイナスのもの、そして「実質的に相続と同じ」とみなされるものをすべて洗い出す必要があります。 

(1)プラスの財産(本来の相続財産) 

手元にある価値のあるものはすべて含まれます。 

・現金・預貯金 

・不動産 :土地・建物 

・有価証券:株式、投資信託、国債など。 

・その他:車、貴金属、骨董品、書画、さらにはゴルフ会員権なども対象です。 

(2)みなし相続財産 

亡くなった時点では持っていなかったけれど、亡くなったことがきっかけで受け取るお金です。 

・死亡保険金 

・死亡退職金 

これらには、残された家族の生活を守るため、「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠が用意されています。 

(3)非課税財産(税金がかからないもの) 

・墓地・仏壇・仏具(日常的に礼拝しているもの) 

・香典(社会通念上相当な範囲) 

(4)債務・葬式費用(マイナスの財産) 

これらはプラスの財産から差し引くことができます。 

・借入金・ローン: 住宅ローン(団信で完済される場合を除く)や未払いの税金 

・葬式費用: お通夜・告別式の費用、お布施など(※香典返しや初七日以降の法要費用は含まれないため注意が必要です) 

(5)生前贈与加算(持ち戻し) 

亡くなる前の一定期間に贈与された財産は、「相続財産の先渡し」と考えて合計に加算します。 

加算期間: 以前は3年前まででしたが、税制改正により順次最大7年前まで遡ることになりました。 

具体的には、以下の計算式に沿って計算します。 

(計算式) 

相続財産の総額 = (プラスの財産 + みなし相続財産) - (非課税財産 + 債務・葬式費用) + 生前贈与加算 

【ステップ2】基礎控除を差し引き「課税遺産総額」を計算する 

相続税には「この金額までは税金がかかりません」という大きなボーダーラインがあります。
これを基礎控除と呼びます。
ステップ1で算出した「相続財産の総額」から「基礎控除」を差し引くことで「課税遺産総額」が決まります。 

相続財産の総額がこの範囲内なら、申告も納税も不要です。 

基礎控除額の計算は以下のとおりです。 

(基礎控除額の計算式) 

基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円× 法定相続人の数) 

例:相続人が配偶者と子供2人(計3人)の場合の基礎控除額 

3,000万円 + (600万円×3人) = 4,800万円 

相続財産の総額が4,800万円以下なら、相続税は0円です(申告も不要です)。 

一方で、相続財産の総額が基礎控除を超えた場合、その超えた部分が「課税遺産総額」となり、相続税計算の土台になります。 

課税遺産総額 = 相続財産の総額 - 基礎控除額 

【ステップ3】「相続税の総額」を計算する(重要ポイント) 

ここが最も間違いやすく、かつ最も重要なステップです。
冒頭でお伝えした「一度、仮に分ける」作業を行います。 

・なぜ「仮に分ける」のか? 

実際の相続では「配偶者が全部もらう」、「長男が不動産を全部もらう」といった偏りが出ることがあります。
しかし、その分け方に直接税率をかけてしまうと、分け方ひとつで相続税の合計額が大きく変わってしまいます。
それを防ぐため、国は「まずは法律通り(法定相続分)に分けたと仮定して、家族全体の納税枠を決めましょう」というルールを作ったのです。 

(計算手順) 

①仮分割: 課税遺産総額を「法定相続分」で各相続人に割り振る。 

②各人の税額算出: 割り振った金額に「相続税の速算表」を当てはめて計算する。 

③合計: 全員の計算結果を足し合わせる。これが「相続税の総額」です。 

【参考:相続税の速算表(2026年時点)】 

法定相続分に応じた取得金額 税率 控除額 
1,000万円以下 10% 0円 
3,000万円以下 15% 50万円 
5,000万円以下 20% 200万円 
1億円以下 30% 700万円 
2億円以下 40% 1,700万円 
3億円以下 45% 2,700万円 
6億円以下 50% 4,200万円 
6億円超 55% 7,200万円 

【ステップ4】各人の「実際の納税額」を計算する 

ステップ3で「相続人全員で払うべき税金の器」が決まりました。
最後は、それを「実際に財産をもらった割合」で分け合い、個別の事情(控除や加算)を加味して、一人ひとりの振込額を決めます。 

(1)実際の相続割合で按分 

例えば、相続税の総額が1,000万円で、実際の遺産を配偶者が60%、子供が40%の割合でもらったなら、税金も「600万円」と「400万円」として割り振ります。 

(2)税額控除と加算の適用 

ここで最終調整をします。個々の状況によって、相続税を加算・減算します。 

①配偶者の税額軽減(配偶者控除)

 配偶者は非常に優遇されており、「1億6,000万円」または「法定相続分」のどちらか多い方までは、実際に受け取っても税金がかかりません。 

②未成年者控除・障害者控除 

相続人が未成年や障害者の場合、一定額を税金から直接引けます。 

③2割加算 

被相続人の配偶者、子、父母以外の人(兄弟姉妹、甥・姪、友人など)が相続する場合は、税額が2割増しになります。 

【実践シミュレーション】 

では、具体的な数字でシミュレーションしてみましょう。 

(条件) 

・相続財産の総額:1億円 

・法定相続人:配偶者、子A、子B(計3人) 

・実際の分け方:法定相続分通り(配偶者1/2、子A 1/4、子B 1/4) 

(計算) 

①ステップ1&2:基礎控除と課税対象 

・基礎控除:3,000万 + (600万×3) = 4,800万円 

・課税遺産総額:1億円 - 4,800万円 = 5,200万円 

②ステップ3:相続税の総額を仮計算 

・配偶者(1/2) :2,600万円 → 税額:2,600万×15% - 50万 = 340万円 

・子A(1/4) :1,300万円 → 税額:1,300万×15% - 50万 = 145万円 

・子B(1/4) :1,300万円 → 税額:1,300万×15% - 50万 = 145万円 

・相続税額の総額:340万 + 145万 + 145万 = 630万円 

③ステップ4:各人の納税額(最終調整) 

・配偶者:340万円 → 配偶者控除により 0円 

・子A:145万円 

・子B:145万円 

結果:家族合計での納税額は 290万円 となります。 

2 まとめ 

相続税の計算は、一見すると迷路のようですが、「財産をまとめる」、「基礎控除を引く」、「仮に分ける」、「個別に調整する」という4つのポイントを外さなければ、正しく理解することができます。 

ただし、実際の計算では「土地の評価」や「特例の適用(小規模宅地等の特例など)」といった、高度な専門知識が必要な場面も出てきます。 

このコラムで全体像を把握できたら、具体的な評価額の算出については、一度税理士などの専門家に相談してみることをおすすめします。 

早めに準備を始めることで、利用できる控除を最大限に活用し、家族の負担を減らすことができるはずです。
今回の内容で、相続税の計算の仕組みが少しでも身近に感じていただければ幸いです。