相続対策って何をすればいいですか?② 【相続税の節税対策】

相続税の節税対策とは、単に税金を減らすことだけを目的とするものではありません。
大切なのは、長年かけて築いてきた資産をできるだけ目減りさせることなく、次の世代へ引き継ぐことです。
いわば「資産を守るための対策」であり、計画的に取り組むことで大きな効果を発揮します。
このコラムでは、代表的な節税対策について、その考え方とポイントをわかりやすく解説します。
目次
1 生前贈与の活用
贈与には年間110万円まで非課税となる「暦年贈与」という仕組みがあります。
この非課税枠を活用して、毎年コツコツと財産を移転していくことで、将来の相続財産を減らすことができます。
ポイントは「継続性」と「記録」です。
贈与契約書を作成する、振込で資金移動を行うなど、客観的に贈与の事実が確認できる形を整えておくことが重要です。
また、名義だけを移した「名義預金」と判断されないよう、受贈者が実際に管理・使用できる状態にしておく必要があります。
2 相続時精算課税の活用
次に検討したいのが、相続時精算課税制度の活用です。
この制度は、一定の要件を満たすことで、2,500万円までの贈与について贈与時の課税を繰り延べ、最終的に相続時にまとめて精算する仕組みです。
令和6年の税制改正により、年間110万円の基礎控除が新たに設けられたことで、以前に比べて使い勝手が向上しました。
将来値上がりが見込まれる資産を早めに移転する場合などに有効ですが、一度選択すると暦年贈与に戻れない点には注意が必要です。
3 生命保険の活用
生命保険の活用も、相続税対策として非常に有効です。
死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設けられており、この範囲内であれば相続税がかかりません。
例えば、法定相続人が3人であれば1,500万円まで非課税となります。
さらに、生命保険は受取人固有の財産となるため、遺産分割の対象外となり、納税資金の確保や争族対策としても役立つというメリットがあります。
4 小規模宅地等の特例の活用
自宅などの土地を所有している場合には、小規模宅地等の特例の活用が重要です。
この特例を使うと、一定の要件を満たすことで、宅地の評価額を最大80%減額することができます。
例えば、自宅の土地を配偶者や同居の親族が相続する場合などが対象となります。
ただし、適用には細かな要件があり、相続後の利用状況なども影響するため、事前にしっかりと確認しておく必要があります。
5 不動産の有効活用
現金や預貯金を不動産に換えることによる評価額の圧縮も、代表的な節税手法の一つです。
現預金は額面どおり評価されますが、不動産は路線価や固定資産税評価額をもとに評価されるため、実勢価格よりも低くなるのが一般的です。
この評価差を活用することで、相続税評価額を引き下げることが可能になります。
ただし、不動産は流動性が低く、管理の手間もかかるため、節税効果だけで判断するのではなく、総合的に検討することが重要です。
6 賃貸物件の建築・購入
賃貸物件の建築や購入も、有効な節税対策の一つです。
賃貸用不動産は、借地権割合や借家権割合といった仕組みにより、自用地よりも評価額が低くなります。
これにより、相続税評価額を引き下げることが可能になります。
また、賃料収入が得られるため、納税資金対策としても機能します。
ただし、空室リスクや維持管理コストなども考慮する必要があります。
7 養子縁組
養子縁組を活用した節税もあります。
養子を迎えることで法定相続人の数が増え、「3,000万円+600万円×法定相続人」という基礎控除額が拡大するほか、生命保険の非課税枠も増えるため、結果として相続税の負担を軽減することができます。
ただし、税務上認められる養子の数には制限があり、過度な節税目的と判断されると否認される可能性もあるため、慎重な対応が求められます。
8 結婚・子育て資金の一括贈与の特例
さらに、結婚・子育て資金の一括贈与の特例も活用できます。
これらの制度を利用すると、一定の条件のもとで高額な資金を非課税で一括贈与することが可能です。
最大1,000万円まで非課税となります。
ただし、資金の使途が限定されていることや制度の期限が設けられている点には注意が必要です。
9 お墓や仏壇の生前購入
見落とされがちですが、お墓や仏壇といった祭祀財産を生前に購入しておくことも節税につながります。
これらは相続税の課税対象外となるため、予め購入しておくことで現金のまま保有するよりも課税対象財産を減らす効果があります。
ただし、過度に高額なものは税務上問題視される可能性があるため、常識的な範囲で準備することが大切です。
10 配偶者の税額軽減の活用
この制度により、配偶者は「1億6,000万円」または「法定相続分」のいずれか多い金額まで、相続税がかかりません。
一見すると非常に有利な制度ですが、配偶者に財産を集中させすぎると、二次相続(配偶者の死亡時)で相続税が増える可能性があります。
そのため、一次相続と二次相続を見据えた「出口戦略」を考えることが重要です。
【まとめ】
ここまで見てきたように、相続税の節税対策には、生前贈与や生命保険の活用、不動産の活用、各種特例の利用など、さまざまな方法があります。
それぞれに一定の効果がある一方で、適用要件や注意点も存在するため、単に「節税になるから」という理由だけで選択するのではなく、自身の財産状況や家族構成に応じて慎重に検討することが重要です。
また、節税対策は一つの手法に偏るのではなく、複数の対策を組み合わせることで、より効果的に機能します。
例えば、生前贈与で財産を減らしつつ、生命保険で納税資金を確保し、不動産の活用で評価額を引き下げるといったように、全体をバランスよく設計することが大切です。
さらに見落としてはならないのが、将来を見据えた視点です。
特に配偶者の税額軽減のように、一時的には大きな節税効果がある制度でも、次の相続(いわゆる二次相続)では逆に税負担が増える可能性があります。
目先の節税だけでなく、中長期的な視点で資産承継を考えることが、結果として大きな差につながります。
相続税の節税対策は、早く始めるほど選択肢が広がり、柔軟な対応が可能になります。
大切な資産をしっかりと守り、次の世代へ円滑に引き継ぐためにも、無理のない範囲でできることから着実に取り組んでいくことが重要です。計画的な対策こそが、将来の安心につながるといえるでしょう。
