下落相場の時はどうしたらいいですか?

株式市場には上昇相場と下落相場が存在します。
これは自然の摂理のようなもので、経済成長や企業業績の好転を背景に株価が上昇することもあれば、景気後退や金融不安、地政学リスクなどを要因に急激な下落を見せることもあります。
過去を振り返れば、 ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショック、トランプ関税ショックなど、多くの暴落局面が投資家を襲ってきました。
ここで重要なのは、「下落」は決して特別な出来事ではなく、株式投資を行ううえで避けて通れないリスクであるということです。
つまり、私たちは「下落」に対してどう向き合うかが問われているのです。
このコラムでは、個人投資家が下落相場にどう対応すべきか、心構えから実践的な対応策まで幅広く解説します。
目次
1 下落相場で陥りやすい「3つの誤り」
(1)パニック売り・狼狽売り
最も多い失敗は、株価が急落することで「このままでは利益がゼロになるのでは」、「大損になってしまう」などの恐怖に駆られ、無計画に株を売却し、損切りの判断を誤ってしまうことです。
確かに、下落に伴う損失が広がるのはつらいものです。しかし、このような感情に任せた売却は、長期的なリターンの可能性を手放すことにつながりかねません。
(2)無理なナンピン買い
「下がったら買い増し」というのは一見合理的に思えますが、資金管理が甘いと、どんどん含み損が膨らみ、最後には手持ち資金が尽きてしまうケースもあります。
投資の名言に「落ちてきたナイフはつかむな」というものがあります。
株価が急落しているときに“底だ”と思って買いに入ると、さらに下落して大けが(=損失)する恐れがあるという意味です。
相場の底は誰にも予測できません。無理なナンピン買いは、かえって傷口を広げてしまいます。
(3)情報に振り回される
株価が下落しているときには、SNSなどで「まだ暴落は続く」「今すぐ売るべきだ」といった不安をあおる投稿を目にすることがあります。
人は、利益よりも損失のほうに強く反応しやすい傾向があります。
そのため、こうしたネガティブな情報を見ると、つい冷静さを失い、過剰に反応してしまいがちです。結果として、自分が立てた本来の投資方針を見失ってしまうことにもつながります。
2 下落相場で大切なのは「冷静さ」と「戦略」
株価が下がるということは、将来的なリターンの源泉でもあります。
安く買えれば、将来の上昇時により大きなリターンが期待できます。
では、どのような視点や戦略で下落相場に立ち向かうべきでしょうか。
(1)長期投資の視点を持つ
冷静に「下落は一時的なノイズであり、長期では市場は成長する」と考えます。
この前提に立つことができれば、目先の価格変動に一喜一憂することはなくなります。
実際、日経平均やS&P500などの主要株価指数は、長期で見ればいずれも右肩上がりに成長しています。
10年、20年というスパンで見れば、暴落局面は通過点でしかないのです。
(2)分散投資でリスクを抑える
特定の銘柄に資産を集中させていると、その資産の下落時の打撃は大きくなります。
資産を特定のセクターや銘柄に集中させず、業種や地域、資産クラス(株式・債券・金など)に分散しておけば、一部が下落しても全体への影響を緩和できます。
(3)積立投資の有効性
下落相場でこそ力を発揮するのが「ドルコスト平均法(積立投資)」です。
定額で投資を続けていれば、価格が下がったときには多くの口数が買えるため、結果として平均取得価格を下げることができます。
長期積立を行っていれば、一時的な下落はむしろ「割安な仕入れチャンス」になるのです。
3 具体的な下落相場の対応策
ここからは、具体的な行動レベルでの対策を紹介します。
(1)まずは「現状分析」
自分の保有資産の状況やポートフォリオ全体のバランスを確認しましょう。
以下の項目を参考に確認するといいでしょう。
・どの銘柄がどの程度下落しているのか
・下落の原因は一時的なものか構造的なものか
・自分の許容リスクの範囲内かどうか
このように冷静に現状分析をするとともに、「なぜこの銘柄を買ったのか?」という原点に立ち返ることが重要です。
(2)損切りか保有の判断
下落した銘柄については、「保有継続すべきか」、「損切りすべきか」の判断が必要になります。
・業績や成長性に大きな変化がなく、一時的な下落と判断すれば、保有継続
・経営不振や業界構造の変化など、今後の回復が見込めない場合は、損切り
単なる含み損の額で判断するのではなく、「当初の投資理由が崩れたかどうか」という観点で判断することが基本です。
(3)現金比率を高めておく
下落相場では、現金を持っていることが大きな強みになります。
なぜなら、株価が割安になったときに、優良株を安く買う「チャンス」を活かせるからです。
また、リスクを抑えるという意味でも、日頃から一定の現金を確保しておくことが大切です。
現金の保有額に正解はなく、人それぞれのリスク許容度によって異なります。
特にリスクに対して慎重な人は、相場が下落したときのことを想定し、「どの程度のリスク資産を持ち、どれだけ現金を保有していれば安心できるか」をあらかじめ考えておくと安心です。
(4)定期的なリバランス
下落によって株式の比率が下がり、安全資産(債券や現金)の比率が相対的に上がっている場合、ポートフォリオ全体の資産バランスが崩れていることがあります。
こうしたときにリバランス(再配分)を行うことで、自然と「安いときに株を買う」行動につながります。
4 メンタル管理と投資哲学の重要性
(1)感情に流されない習慣を作る
下落相場で一番難しいのは「冷静さを保つこと」です。
感情的な判断は、売り時も買い時も逃す原因になります。
自分の中に「ルール」を作り、それに従って機械的に行動することがリスクを抑える鍵となります。
(2)投資の目的を再確認する
当初の投資目的を再確認することで、短期的な値動きに一喜一憂する気持ちが抑えられ、落ち着いて投資を継続することができます。
・老後資金のため
・子どもの教育費の準備のため
・資産形成の長期目標のため
(3)過去の暴落から学ぶ
過去の暴落でも、冷静に対応した投資家は報われてきました。
例えば、リーマンショック時に売らずに保有し続けた人の多くは、5年〜10年後に大きく資産を回復させています。
過去の暴落の歴史を学ぶことで、今の混乱が一過性であると理解できるようになります。
(4)下落相場を「学びとチャンス」の場と捉える
相場が好調なときには見過ごしてしまうようなことも、下落局面でははっきりと浮き彫りになります。
たとえば、以下のような気づきが得られます。
・自分のリスク許容度を改めて確認できる
・投資判断の甘さや情報収集の不足に気づける
・より堅実な投資方針を見直すきっかけになる
このように、失敗は決して無駄ではなく、貴重な「学び」の機会となります。
下落相場を経験し、自分の行動を冷静に振り返ることで、投資家として一段と成長できる――それが本当の意味での「投資経験」と言えるでしょう。
5 まとめ
株式投資は、常に順調に進むわけではありません。
時には大きく下落し、不安や恐怖に駆られる場面もあります。
それでも株式投資が資産形成において有効な手段であり続けるのは、長期的に見れば、リスクを取った人が報われる市場だからです。
だからこそ、下落相場のたびに「狼狽売り」や「一か八かの賭け」に出るのではなく、自分が立てた投資方針や戦略を信じて、粘り強く継続する姿勢が大切です。
言い換えれば、相場の波に振り回されない「ぶれない軸」を持つことが重要なのです。
感情に流されず、理性的な判断を積み重ねる――。
それこそが、下落相場を乗り越える最良の方法であり、資産形成の王道と言えるでしょう。
