分配型投資信託がおすすめされないのはなぜですか?

投資信託を選ぶときに、「分配型」と「無分配型」という言葉を目にすることがあると思います。
特に、分配型投資信託は、毎月や定期的に分配金を受け取れるという仕組みから、「お小遣い感覚で収入が得られる」、「年金代わりになる」といったイメージで人気を集めてきました。 

実際に、銀行や証券会社の窓口でおすすめされる投資信託の多くが「毎月分配型」だった時期もあり、「毎月分配型ファンドブーム」と呼ばれたほどです。
分配金を受け取れると、投資をしている実感が持てますし、安心感もありますよね。 

ただし、「分配金がある=お得」というわけではありません。
仕組みや特徴を正しく理解しておかないと、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性もあるのです。 

このコラムでは、分配型投資信託の仕組みや特徴、メリットと注意点などを整理しながら、個人投資家が知っておくべきポイントをわかりやすく解説していきます。 

1 分配型投資信託の仕組み 

投資信託とは、投資家から集めた資金をファンドマネージャーが株式や債券などに分散投資し、その運用成果を投資家に分配する金融商品です。 

分配型投資信託では、この「運用成果の一部」を分配金として定期的に投資家へ支払います。 

分配金の原資には以下の3つがあります。 

① 運用益:株式や債券の値上がり益や配当・利息収入 

② 元本の払い戻し(特別分配金):運用で得られた利益だけで足りない場合、投資家の元本を取り崩して分配 

③ 繰越分:過去の利益を積み立てていたものを取り崩す 

ここで注意が必要なのが、「分配金がすべて利益ではない」という点です。 

たとえば、分配金として毎月1万円を受け取っていても、それが必ずしも運用益から支払われているとは限りません。
元本を削って分配している場合もあるのです。このため「毎月お金がもらえるから儲かっている」と考えるのは誤解につながります。 

2 分配型投資信託の特徴 

分配型投資信託には、投資家にとって魅力的に映るいくつかの特徴があります。 

(1)定期的に現金を受け取れる 

分配型投資信託の最大の特徴は、定期的に現金(分配金)を受け取れる点です。 

毎月や隔月、四半期、年数回といった形で分配金が支払われるため、まるで「お小遣い」や「年金収入」のように感じられます。 

たとえば、毎月1万円の分配金が口座に振り込まれると、投資の成果を目に見える形で実感できます。
定期的に現金収入があると、生活費の補填や趣味に使う資金としても活用できるため、特に退職後の生活資金の足しにしたいシニア層に人気があります。 

(2)投資成果を実感しやすい 

株式や無分配型の投資信託では、評価額の増減を通してしか成果を確認できません。
一方、分配型投資信託は「分配金」という形で成果が定期的に目に見えるため、「投資してよかった」という実感を得やすいのです。 

数字の増減だけではどうしても投資が抽象的に感じられてしまう方でも、分配金を受け取ると「投資から収入を得ている」という実感が湧きます。
これは投資初心者にとってモチベーション維持につながりやすく、心理的な効果も大きいといえるでしょう。 

(3)人気商品として販売されやすい 

分配型投資信託は、金融機関の窓口や証券会社で積極的に販売されることが多い商品です。
理由はシンプルで、「毎月分配金が出ます」と説明すれば投資家にとってわかりやすく、魅力的に映るからです。 

特に、日本では、投資信託が人気になり始めた時期に「毎月分配型ファンド」が大々的に販売され、シニア層を中心に高い人気を集めました。
そのため、「投資信託=分配金がもらえるもの」というイメージを持っている人も少なくありません。 

(4)心理的な安心感を得やすい 

分配型投資信託の特徴として見逃せないのが、心理的な安心感を得やすいという点です。 

投資をしていると、相場の上下によって評価額が日々変動します。そのたびに不安を感じたり、損をしているように思えたりすることもあるでしょう。 

しかし、分配金が定期的に入ってくると、「たとえ相場が下がっていても収入がある」と感じられ、精神的に落ち着いて投資を続けやすくなります。 

特に、リタイア後は「投資を続けながらも安定的に現金収入を得たい」というニーズが高まります。その意味で、分配型投資信託は心理的なサポート機能を果たすともいえるでしょう。 

3 分配型投資信託がおすすめできない理由 

分配型投資信託は「定期的にお金がもらえる」という魅力がありますが、その裏側にはいくつかの注意点やデメリットが存在します。
仕組みをしっかり理解しないまま購入してしまうと、「思っていた結果と違った」ということにもなりかねません。 

(1)元本が取り崩される可能性がある 

分配金は必ずしも運用益から支払われるとは限りません。
実際には、投資信託の元本を取り崩して分配しているケースも少なくないのです。 

たとえば、投資信託が1年間で利益をあまり出せなかったとします。
しかし、「毎月分配金を出す」と約束している場合、運用会社は元本を削ってでも分配金を支払います。
その結果、資産は目減りしていき、長期的にみると投資家の資産形成を妨げてしまうのです。 

「毎月現金が入ってくるから安心」と思っていても、実際には自分のお金を取り崩しているだけ、というケースがある点には注意が必要です。 

(2)複利効果を得にくい 

資産を長期的に増やすうえで重要なのが「複利効果」です。
利益を再投資し、雪だるま式に資産を膨らませていく仕組みです。 

しかし、分配型投資信託は、利益が出てもその一部を分配金として払い出してしまうため、再投資による複利効果を活かしにくいのです。 

「資産を長期的に大きく育てたい」という人にとっては、この点が大きなマイナスになります。 

(3)高コスト商品が多い 

分配型投資信託のなかには、売買コストがかかる商品や信託報酬(運用コスト)が高めに設定されている商品が多いという特徴があります。 

投資信託は長期的に保有することが前提となるケースが多いため、このコスト差は軽視できません。
10年・20年と運用を続けるうちに複利効果を大きく削ってしまい、結果として資産の増え方が鈍くなります。 

(4)税金面で不利になる 

分配型投資信託のデメリットのひとつは、分配金を受け取るたびに課税されることです。
日本では分配金に約20%の税金がかかります。 

無分配型の投資信託であれば、利益をそのままファンド内で再投資できるため、課税を先送りしながら資産を増やすことが可能です。 

一方、分配型は分配金が支払われるたびに課税されるため、長期的に見ると効率よく資産を増やしにくい仕組みになっています。 

さらに、毎月分配型の投資信託はその性質からNISAの対象外とされており、非課税メリットを享受できません。 

特に、長期で資産形成を目指す人にとって、「課税を繰り延べできない」、「非課税メリットを受けられない」という点は、将来的に無視できない差となって表れてくるのです。 

(4)投資家が誤解しやすい 

「分配金=利益」と思い込んでしまう投資家が多いのも問題です。
分配金が安定して出ていると「この投資信託は安定して儲かっている」と錯覚してしまいがちですが、実際には元本を削っているだけの場合もあります。 

さらに、分配金の金額が大きいほど魅力的に見えるため、つい「高分配型」を選んでしまう方も多いのですが、高分配=優秀というわけではありません。
実際には資産が減っていくリスクも大きく、長期投資には不向きとなるケースが多いのです。 

投資の目的が「長く資産を育てたい」なのか「今すぐ現金収入が欲しい」なのかを整理せずに購入すると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。 

4 まとめ 

分配型投資信託は、定期的に分配金を受け取れる安心感があり、特に生活資金に余裕がなく、安定的な現金収入を求める方には魅力的に映ります。 

しかし、長期的な資産形成という観点では、複利効果を活かしにくく、元本を取り崩してしまうリスクもあるため注意が必要です。 

「投資は目的によって選ぶ商品が変わる」というのは大切なポイントです。 

分配型投資信託は、毎月のお小遣い感覚で分配金を受け取りたい人にはいいのですが、将来のための資産形成を重視する人には、低コストの無分配型投資信託を選ぶのが賢明でしょう。