個人向け国債ってオススメですか?

投資と聞くと、「株式は値動きが激しくて不安」、「不動産はまとまった資金が必要」と、なかなか一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。 

そんな中で、比較的安心感があり、少額から始められる選択肢のひとつが「個人向け国債」です。
国が発行する債券であり、元本が保証されているため、「投資は初めてだけど、まずは堅実に資産を増やしたい」という方にとって取り組みやすい商品です。 

もちろん、メリットばかりではなく、注意すべき点も存在します。 

このコラムでは、個人向け国債の基本から特徴、活用方法までを整理し、皆さんの自分に合った投資へのヒントをご紹介します。 

1 個人向け国債とは? 

「個人向け国債」とは、日本国政府が発行する国債のうち、個人投資家向けに販売されるものを指します。

国債とは、政府が資金調達のために発行する借用証書のようなものです。
企業が事業資金を集めるために社債を発行するのと同じように、政府も政策や公共事業を進めるために資金が必要になります。
その調達手段の一つが国債であり、投資家は国債を購入することで政府にお金を貸し、代わりに利息を受け取る仕組みになっています。 

従来の国債は100万円単位といった大口投資が中心で、売却も容易ではなく、個人投資家にはややハードルが高い商品でした。 

そこで、2003年に導入されたのが「個人向け国債」です。
これは個人投資家が少額から購入でき、途中換金もしやすいように設計された金融商品です。
最低1万円から購入可能であり、銀行や証券会社を通じて簡単に申し込めることから、60代を中心に幅広い層に利用されています。 

2 個人向け国債の種類 

個人向け国債には、現在大きく分けて「変動金利型」と「固定金利型」の2つのタイプ、3種類の商品があります。 

いずれもは1万円単位で購入可能であり、購入時期ごとに発行条件(利率)が財務省から発表されます。 

(1)変動10年(変動金利型10年満期国債)

 代表的なタイプが「変動10年」です。
これは10年間の満期を持ち、半年ごとに利率が見直される「変動金利型」です。 

基準となるのは10年物国債利回りであり、金利が上昇すれば利息も増え、逆に低金利時には利息も減少します。
最低金利は年0.05%と設定されており、たとえゼロ金利政策下であっても利息が全くなくなることはありません。 

長期的に保有しながら、金利動向に応じた収益を得たい人に向いています。 

(2)固定5年(固定金利型5年満期国債) 

こちらは購入時に決まった利率が満期まで変わらない「固定金利型」です。 

満期は5年で、半年ごとに利息が支払われます。
金利が低下していく局面では有利に働きますが、反対に金利が上昇していく局面では相対的に見劣りすことになり。 

(3)固定3年(固定金利型3年満期国債) 

さらに短期の商品として「固定3年」もあります。 

基本的な仕組みは固定5年と同様で、利率が固定されており、3年間保有すれば確実に元本と利息を受け取れます。
投資期間を短めにしたい人や、将来の資金需要が見えている人に向いています。 

3 個人向け国債のメリット 

個人向け国債には、他の金融商品にはないメリットがいくつもあります。 

(1)安全性が高い 

国債は「国が発行する債券」であり、元本や利息の支払いは日本国政府が保証しています。
企業の社債や株式と比べても信用リスクは極めて低く、事実上「元本割れリスクのない投資商品」と言われています。 

(2)最低利率保証 

変動10年では年0.05%の最低利率が設定されています。たとえ金融
市場がマイナス金利に近い状況になっても、利息がゼロになることはありません。 

(3)少額から始められる 

いずれもは1万円単位で購入可能であり、購入時期ごとに発行条件(利率)が財務省から発表されます。
初心者やまとまった資金を持たない人でも投資に参加できます。 

(4)中途換金が可能 

原則として1年経過後であれば、いつでも途中換金が可能です。
解約時には直前2回分の利息が差し引かれますが、それでも流動性は高く、資金需要に応じやすい設計です。 

(5)相続・贈与にも利用しやすい 

相続時には評価額が明確であり、贈与の際にも少額から移転が可能です。
そのため資産承継の一部として利用されるケースもあります。 

4 個人向け国債の注意点

 メリットの多い個人向け国債ですが、注意すべき点も存在します。 

(1)リターンが低い

 国債は安全性が高い分、利回りは低めに抑えられています。
株式や投資信託のように大きなリターンを期待する商品ではなく、あくまで安定運用向けです。 

(2)金利上昇局面では見劣りする場合がある 

固定金利型の場合、購入後に金利が上昇すると新規発行の国債に比べて利率が低くなり、相対的に不利になります。
変動金利型であっても、金利の上昇に追随するまで半年のタイムラグがある点に注意が必要です。 

(3)中途換金に手数料がかかる

 途中換金は可能ですが、直前2回分の利息が差し引かれるため、短期運用には不向きです。
「必要になれば解約できる」安心感はあるものの、あくまで中長期で保有する前提で考えた方がよいでしょう。 

(4)インフレへの耐性は限定的 

物価が大幅に上昇した場合、国債の利息では実質的な購買力を守りきれない可能性があります。
インフレヘッジを目的とするなら、株式や不動産、インフレ連動国債といった他の商品と組み合わせる工夫が必要です。 

5 主な活用方法 

個人向け国債は「安全性の高い資産運用手段」として、個人投資家にとって有力な選択肢のひとつです。
大きなリターンは望めないものの、元本割れリスクがほぼない点は大きな安心材料です。 

投資初心者にとっては「投資の第一歩」として適していますし、経験豊富な投資家にとっても「ポートフォリオの安定部分」として活用できます。 

具体的な活用方法としては、 

①預貯金だけでは物足りないと感じる人が、資産の一部を国債に移す 

②株式や投資信託のリスク資産と組み合わせて安定性を補強する 

③教育資金や住宅資金など、数年後に使う予定のある資金を運用する 
といった使い方が考えられます。 

また、インフレや金利動向によって魅力が変動するため、購入前には最新の発行条件を確認することも大切です。
金融機関の窓口や財務省のウェブサイトでは最新情報が公開されています。 

6 まとめ 

総じて、個人向け国債は「守りの投資商品」として位置付けられます。
元本保証があり、最低金利も確保されているため、安心感をもって資産を運用できる点が大きな魅力です。 

また、1万円から購入できる手軽さもあり、投資初心者にとって入り口として選びやすい商品と言えるでしょう。 
一方で、大きなリターンは期待しにくく、金利が低い局面ではほかの資産に比べて見劣りすることもあります。
途中解約には制限や手数料があるため、運用期間や資金計画をしっかり考えてから購入することが大切です。 

攻めの投資と守りの投資のバランスを取りながら、ライフプランに合わせて無理のない範囲で上手に活用していくことが、長期的な資産形成につながるでしょう。