知っておこう、「投資の格言」(パート2)

投資の世界には、長年の経験や失敗から導き出された「格言」が数多く存在します。
これらは単なる言葉ではなく、相場の本質を突いた重要な教訓です。 

今回は、個人投資家にとって役立つ、「投資における売買判断」に関する代表的な格言を取り上げ、実例を交えながらその意味と活かし方をご紹介します。 

1 「買うべし、売るべし、休むべし」―「休むこと」も大切

 この格言は、投資には「買う」か「売る」か、あるいは「何もしない」という3つの選択肢があることを教えています。

特に重要なのが「休む」という選択肢です。相場には明らかに方向感がない局面や、予想が難しいタイミングがあります。
そんなとき無理にポジションを持たず、静観することが、結果的に損失を回避する有効な手段となります。 

たとえば、2020年3月は、新型コロナウイルスの世界的流行により株式市場は大きく動揺しました。
このような極端なボラティリティの中では、無理にトレードせず、相場が落ち着くのを待つ姿勢が、むしろ賢明だったといえます。 

2 「高値づかみ、安売り無念」―安易な飛びつきは危険 

これは初心者に多い失敗のパターンを端的に表した格言です。

株価が上昇して話題になっていると、つい高値で飛びついてしまい、下落に転じたとたん不安になって安値で売ってしまう。これでは逆に損失が積み重なってしまいます。 

 2021年、米国のテスラ株は一時急騰し、多くの個人投資家が高値圏にもかかわらず買いに走りました。
しかし、その後短期的に大きく調整し、高値づかみした人たちは含み損に耐えられず、損失確定の売りを出す羽目になったケースが多く見られました。 

3 「損切り貧乏になるな、でも損切りは必要だ」―「損切り」のコツ 

損切りは非常に重要なリスク管理手段ですが、頻繁に行いすぎると、コストやタイミングの問題で資金を減らしてしまうこともあります。

大切なのは、無駄な損切りを避けつつも、明確なルールを持って早期の損失限定を行うことです。 

含み損が出るたびに感情的に売却してしまうと、全体の資産が徐々に減少しまいます。
たとえば、「5%の下落で損切り」などのルールを徹底することにより、想定外の大きな下落から資金を守ることができます。 

4 「明確な売買ルールの設定」―ルールでパニック防止 

感情に左右されずに取引するためには、自分なりの売買ルールが不可欠です。
買いポイント、利益確定ライン、損切りラインを事前に設定しておくことで、パニックにならずに冷静な判断が可能になります。 

その結果、負けトレードもありますが、総合的には安定して資産を増やすことができるようになります。

5 「利は急げ、損は遅らせるな」―「利益確保」のコツ

 これは、短期トレード中心の人のための格言です。 

含み益が出ているうちに早めに利確し、含み損が出た場合は早めに損切りを行うべきだということを教えています。
利益は"幻"になる前に現実のものにし、損は"傷口"が浅いうちに手当てすべきです。 

たとえば、株価が10%上昇したにもかかわらず、さらに上昇を期待して持ち続けた投資家が、反転下落により最終的に損失を抱えるケースは多く見られます。
逆に、一定の目標で確実に利確していれば、収益として確定していたわけです。 

6 「トレンドに逆らうな」―流れに従う

 上昇トレンドの中で売りを狙ったり、下落トレンドの中で無理に買いに入るのは、非常にリスクの高い行動です。
相場の流れに逆らわず、順方向に乗ることで成功の可能性が高まります。 

 日経平均が継続的に上昇している局面では、大型株に買いが集中する傾向があります。
このようなときには、トレンドに乗ることが賢明です。 

7 「銘柄選びは相場選び」―トレンドやテーマに着目 

良い銘柄を選ぶには、個別企業の業績だけでなく、相場全体のトレンドや市場テーマにも目を向けることが重要です。 

たとえば、金融緩和局面ではグロース株が買われやすく、金利上昇局面ではバリュー株が強くなる傾向があります。 

また、生成AIが話題となった際には、半導体関連銘柄やIT企業が注目されました。
この相場テーマを捉えた投資家は短期的にも大きな利益を上げました。
テーマに乗った銘柄選びが、パフォーマンスを大きく左右することがよくわかる事例です。 

まとめ 

投資の格言は、単なる昔の知恵ではなく、今なお個人投資家にとって有益な実践指針です。
それぞれの格言が示す本質を理解し、自分なりの投資スタイルに落とし込んでいくことで、投資の精度と安定性を高めることができます。 

市場には常にリスクとチャンスが同居しています。だからこそ、焦らず、慌てず、冷静にトレードすることが大切です。 

そして、シンプルなルールと自制心を武器に、地に足のついた投資を心がけましょう。