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これから投資を始めようとしている方や、資産形成の選択肢を検討している方にとって、「全世界株式投資」は注目すべき選択肢の一つです。
その名の通り、全世界の株式市場に分散投資するスタイルで、特定の国や地域に依存せず、グローバルな成長の恩恵を広く受け取ることを目的としています。
「日本株だけ」「米国株だけ」といった集中投資に比べ、全世界株式投資はリスクを抑えつつ長期的なリターンを目指せる点が大きな特徴です。
このコラムでは、全世界株式投資の概要やメリット・デメリット、代表的な投資信託・ETF、そして活用のポイントについて詳しく解説します。
目次
1 全世界株式投資とは?
全世界株式投資とは、世界中の株式に広く分散して投資を行うスタイルを指します。
主に「MSCI ACWI」や「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」などの世界株式指数に連動する投資信託やETFを通じて投資します。
これらの指数は、先進国から新興国まで、大小さまざまな企業を対象にしており、数千社に分散投資されることも珍しくありません。
たとえば、MSCI ACWIは約2,800社、FTSEグローバル・オールキャップは7,000社以上を対象としています。
2 世界全体への株式投資が注目される理由
(1)国際分散投資によるリスク分散
株式市場は国や地域ごとに値動きが異なります。
特定の国に投資していると、その国の経済情勢や政策リスクに大きく影響されてしまいますが、全世界に分散することで一国依存のリスクを大幅に低減できます。
たとえば、ある年に米国市場が低迷していても、新興国が好調な年もあります。
そういった地域のバランスを取りながら、全体として安定した成長を目指すことが可能です。
(2)世界経済全体の成長を取り込める
全世界株式投資の基本的な考え方は「世界経済全体は長期的に成長していく」という前提に基づいています。
テクノロジーの進化、人口増加、新興国の経済発展などにより、世界全体の企業価値は長い目で見れば増加していくと考えられています。
一国では人口減少や成長鈍化が不安要素になることもありますが、全世界に投資することでそういったリスクを相殺しやすくなります。
3 全世界株式投資のメリット
(1)1つの商品で世界中の企業に広く分散投資できる
最大の魅力は「グローバルな分散投資」が一つの商品で実現できることです。
たとえば、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」のような投資信託を1本購入するだけで、米国、日本、欧州、中国など先進国・新興国を含む数千の企業に自動で分散投資されます。
【ポイント】
・企業数は数千社以上におよぶ(指数によって異なる)
・一国や一業種に依存しない
・地政学的リスク、経済成長格差、為替変動のリスクを相殺しやすい
(2)世界経済の成長を丸ごと取り込める
長期的に見れば、世界の人口は増加し、企業の技術革新や新興国の経済成長も続いています。
こうした成長の果実を、国を選ばず「まるごと」取り込めるのが全世界株式投資の魅力です。
【参考データ】
・世界全体のGDPはおおむね年率3%前後で成長(IMF統計)
・新興国の成長率は先進国より高く、ポテンシャルが大きい
・過去30年間で世界株式は年平均6〜7%のリターンを記録(配当込み)
(3)投資初心者でも取り組みやすい
個別銘柄を選ぶ必要がなく、インデックスに連動した投資信託やETFを購入するだけなので、銘柄分析や経済予測をしなくても、シンプルな積立投資が可能です。
【初心者にやさしい理由】
・1本で完結、銘柄選定不要
・購入タイミングに悩まず積立が可能
・売買手数料が無料、信託報酬も年0.1%台と低コスト(※ファンドにより異なる)
(4)長期投資に適しており、運用効率が高い
全世界株式は「長期保有によって安定した成長が期待できる」設計となっています。
リバランスも不要で、保有し続けることで複利効果を享受できます。資産形成を目的とした「NISA」や「iDeCo」との相性も抜群です。
4 全世界株式投資の注意点
魅力の多い全世界株式投資ですが、「万能」ではありません。
いくつかの注意点を理解しておくことで、後悔のない投資につながります。
(1)米国株への偏りが大きい
「全世界株式」と聞くと、均等に分散されているイメージがありますが、実際の構成比では米国株が60%以上を占めることがほとんどです。
これは、時価総額ベースの指数設計によるものです。
そのため、実態としては「米国株偏重型のグローバルファンド」とも言えるのです。
これは裏を返せば、米国経済が低迷したり、株式市場が大きく下落した場合、全世界株式ファンド全体に強い影響を及ぼすことを意味します。
(2)リターンが最大化されない可能性
分散によってリスクは抑えられますが、リターンも平均化されます。
たとえば、米国株の成績が非常に良い年には、全世界株式はそれよりパフォーマンスが落ちることがあります。
「高リターンを狙いたい」という投資スタイルにはやや物足りなさを感じる可能性があります。
(3)新興国リスクを含んでいる
成長性のある新興国ですが、政治不安や財政不透明性、通貨急落といったリスクも抱えています。
指数に占める割合は小さいとはいえ、全世界株式には新興国も含まれており、時には足を引っ張る可能性もあります。
(4)円高局面では評価額が目減りすることも
海外資産が中心のため、為替の影響は避けられません。
急激な円高が進むと、基準価額が下がることもあります。ただし、これは逆に円安時にはプラスに働く「両刃の剣」です。
長期保有を前提とすれば、為替リスクは平均化される可能性も高いですが、短期的な評価額の増減には注意が必要です。
(5)投資対象国の変化に柔軟対応できない
全世界株式ファンドはインデックスに従って自動的に配分されるため、国ごとの状況に応じた柔軟な投資判断(たとえば「今は中国を外したい」など)はできません。
「アクティブに判断したい」人には向かない投資スタイルといえます。
5 MSCI ACWIについて
(1) MSCI ACWIとは
「MSCI ACWI」とは、MSCI All Country World Indexの略称で、 MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル) が提供する世界中の先進国と新興国の株式を対象とした株価指数です。
全世界49ヵ国の上場企業を対象にしており、実質的に世界経済の約85%以上を網羅しているとされています。
この指数は、グローバル経済の成長を幅広く享受できるベンチマークとして、多くのインデックスファンドやETFに採用されています。
(2)構成国・業種・銘柄
2500社以上の大型株および中型株が含まれています。
これは、時価総額の大きい企業を優先的に組み入れるという、いわゆる「時価総額加重平均型」の設計によるものです。
① 組入上位10カ国・地域
国・地域 | 構成比率 | |
1 | アメリカ | 63.1% |
2 | 日本 | 5.0% |
3 | イギリス | 3.4% |
4 | カナダ | 2.8% |
5 | フランス | 2.6% |
6 | ドイツ | 2.3% |
7 | スイス | 2.2% |
8 | インド | 1.9% |
9 | ケイマン諸島 | 1.8% |
10 | 台湾 | 1.7% |
上位10カ国合計 | 86.8% |
※2025年4月30日現在
② 組入上位10業種
業種 | 構成比率 | |
1 | 情報技術 | 23.2% |
2 | 金融 | 17.7% |
3 | 資本財・サービス | 10.5% |
4 | 一般消費財・サービス | 10.5% |
5 | ヘルスケア | 9.8% |
6 | コミュニケーション・サービス | 8.1% |
7 | 生活必需品 | 6.3% |
8 | エネルギー | 3.7% |
9 | 素材 | 3.6% |
10 | 公益事業 | 2,7% |
上位10業種合計 | 96.1% |
※2025年4月30日現在
③ 組入上位10銘柄
銘柄 | 国・地域 | 業種 | 構成比率 | |
1 | アップル | アメリカ | 情報技術 | 4.1% |
2 | マイクロソフト | アメリカ | 情報技術 | 3.6% |
3 | エヌビディア | アメリカ | 情報技術 | 3.4% |
4 | アマゾン・コム | アメリカ | 一般消費財・サービス | 2.3% |
5 | メタ・プラットフォームズ | アメリカ | コミュニケーション | 1.6% |
6 | アルファベット(グーグル) | アメリカ | コミュニケーション | 1.5% |
7 | ブロードコム | アメリカ | 情報技術 | 1.1% |
8 | テスラ | アメリカ | 一般消費財・サービス | 1.1% |
9 | イーライリリー | アメリカ | ヘルスケア | 0.9% |
10 | バークシャー・ハサウェイ | アメリカ | 金融 | 0.9% |
上位10銘柄合計 | 20.5% |
※2025年4月30日現在
6 全世界株式投資を成功させるために
(1)短期の値動きに一喜一憂しない
全世界株式投資は「世界の未来を信じて、気長に待つ」投資です。
市場が下落しても売らずに淡々と積み立てることが、長期での資産形成につながります。
(2)生活防衛資金を確保してから投資する
万一の病気や失業に備え、半年〜1年分の生活費は現金で持っておくのが基本です。
余剰資金でコツコツ投資を行いましょう。
(3)手数料の安いファンドを選ぶ
信託報酬の差は長期的に大きな差を生みます。特に20年以上の投資を想定する場合、年0.1%でもコストが低いファンドを選ぶ価値は大いにあります。
【代表的な低コストファンド】(2025年5月現在)
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド
楽天・全世界株式インデックス・ファンド
7 まとめ
全世界株式投資は、「世界経済の成長に乗る」シンプルかつ堅実な投資戦略です。
世界中の企業に広く分散投資することで、特定の国や銘柄への依存を避け、安定した資産形成が目指せます。低コストのインデックスファンドやETFも充実しており、初心者でも始めやすいのが魅力です。
「どこに投資すべきか」と悩むより、世界全体に投資することで経済全体の成長を取り込む発想は、多くの投資家にとって合理的な選択といえるでしょう。
一方で、米国株偏重や為替リスクなどの注意点も存在します。
自分のリスク許容度や目的を踏まえたうえで、長期的な視点で活用することが成功の鍵です。
「何から始めたらいいかわからない」と悩む方こそ、全世界株式から一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。