NASDAQについて詳しく教えて!

株式投資を始めると、「NASDAQ(ナスダック)」という言葉をよく目にするようになります。
特に米国株に興味がある方にとって、NASDAQは避けて通れないキーワードのひとつです。
AppleやAmazon、Microsoftといった世界的な企業が上場していることで知られるNASDAQは、どのような市場なのか?その歴史的背景や特徴、そして私たち個人投資家にとっての意味をわかりやすく解説します。
目次
1 NASDAQとは?
NASDAQとは、「National Association of Securities Dealers Automated Quotations」の略で、1971年にアメリカで開設された株式市場です。
直訳すると「全米証券業協会自動化見積りシステム」となりますが、要するにコンピューターを使って株価を表示・売買できる世界初の電子株式取引所としてスタートしたのがNASDAQです。
NYSE(ニューヨーク証券取引所)と並ぶアメリカの代表的な株式市場であり、特にテクノロジー関連企業が多く上場していることから、「ハイテク株の集まる市場」として知られています。
その主な特徴は以下のとおりです。
①完全電子取引市場
NASDAQは取引所のフロアを持たず、最初から全取引が電子的に行われる設計になっています。
これは1970年代としては画期的な仕組みでした。
②新興企業に開かれた市場
NASDAQは、比較的上場基準が緩やかで、成長段階にある企業にも上場のチャンスを与えています。
③テクノロジー企業が中心
Microsoft、Apple、Google(Alphabet)、Amazon、Meta(旧Facebook)など、米国を代表するIT企業の多くがNASDAQに上場しています。
2 NASDAQの歴史
NASDAQの歴史は、アメリカの証券取引の近代化、そしてハイテク産業の台頭と密接に関係しています。
以下に、その歴史の主な流れを時系列で紹介します。
①1971年:世界初の電子取引市場として誕生
NASDAQは1971年、全米証券業協会(NASD)のもとで創設されました。
それまでの証券取引は、電話や対面での注文が主流でしたが、NASDAQは電子的に価格情報を提供し、証券会社同士が迅速に取引できる仕組みを導入しました。
この仕組みは投資家の利便性を大きく向上させるものであり、後のオンライン取引の礎となりました。
②1980年代:テクノロジー企業の受け皿として急成長
1980年代には、IBMに続く新興テック企業が次々に登場し、NASDAQに上場しました。
特にMicrosoft(1986年上場)やApple(1980年上場)など、のちに巨大企業となるベンチャーがNASDAQを選んだことで、その存在感が高まりました。
NASDAQは、NYSEに比べて上場要件が緩やかで、資金調達がしやすかったことから、革新的な企業にとって魅力的な上場先となりました。
③1990年代:ドットコム・ブームとバブル崩壊
1990年代後半には、インターネット関連企業が続々とNASDAQに上場し、「ドットコム・バブル」と呼ばれる現象が起こります。
Yahoo!、Amazon、eBayなど、ネットを活用したビジネスモデルを展開する企業が投資家の熱狂を呼び、NASDAQ指数も急騰しました。
しかし2000年にバブルが崩壊し、多くのIT企業の株価が暴落。NASDAQも大きく下落し、ピーク時の半分以下にまで指数が落ち込みました。
このバブル崩壊は「ITバブル崩壊」とも呼ばれ、リスクの大きさも同時に投資家に認識させる出来事となりました。
④2000年代以降:GAFAMの時代へ
2000年代後半から2010年代にかけては、Apple、Amazon、Google、Facebook、Microsoftといった超大手IT企業、いわゆる「GAFAM」がNASDAQを牽引する存在となります。
これらの企業は、ITバブル崩壊を生き延び、世界経済を牽引するまでに成長。NASDAQも指数として再び上昇を続け、株式市場における存在感は一段と高まりました。
3 NASDAQ指数とは?
NASDAQには複数の株価指数がありますが、中でも最も有名なのが「NASDAQ総合指数(NASDAQ Composite Index)」と「NASDAQ100(ナスダック100)」です。
(1)NASDAQ総合指数(NASDAQ Composite Index)
①概要
NASDAQ総合指数は、NASDAQに上場しているすべての普通株(約3000社以上)を対象にした時価総額加重平均型の指数です。テクノロジー関連企業が多いNASDAQ市場の全体的な動きを表す指標として広く利用されています。
②特徴
・構成銘柄数が非常に多い:AppleやMicrosoftなどの大企業から、無名の新興企業まで含まれる。
・時価総額加重型:企業の規模(時価総額)が大きいほど、指数に与える影響も大きくなります。つまり、AppleやAmazonのような巨大企業の値動きが指数全体を大きく左右します。
・テクノロジー偏重:NASDAQ市場自体がテック企業に偏っているため、総合指数も自然とハイテク色が強くなっています。
③用途
NASDAQ総合指数は、主に以下のような目的で利用されます。
・米国テクノロジー市場全体のパフォーマンスを測定
・景気動向や投資家心理のバロメーターとしての活用
・NASDAQ連動型ETFやインデックスファンドのベンチマーク
(2)NASDAQ100指数(NASDAQ-100 Index)
①概要
NASDAQ100指数は、NASDAQに上場している企業のうち、金融業を除いた時価総額上位100社を対象に構成された株価指数です。1985年に導入されました。
②特徴
・厳選された大型株が中心:構成銘柄はわずか100社ですが、その多くが世界的な大企業です。
GAFAM(Google、Apple、Facebook(Meta)、Amazon、Microsoft)をはじめ、NVIDIA、Tesla、Netflixなど名だたる企業が並びます。
・金融業を除外:NASDAQ100は純粋なテクノロジー・消費・ヘルスケア企業で構成されており、銀行や保険会社などの金融業種は含まれていません。
・流動性と成長性が高い:選ばれた企業は世界を代表する成長企業であり、投資家からの注目度が非常に高いのが特徴です。
③用途
・テクノロジー株にフォーカスした投資戦略のベンチマーク
・NASDAQ100連動ETFを通じたインデックス投資
・高成長セクターへの集中投資
(3)構成銘柄( NASDAQ100指数)
①組入上位10業種
業種 | 構成比率 | |
1 | 半導体・半導体製造装置 | 19.5% |
2 | ソフトウエア・サービス | 18.4% |
3 | メディア・娯楽 | 13.4% |
4 | テクノロジー・ハードウェア・機器 | 10.2% |
5 | 一般消費財・サービス流通・小売り | 7.4% |
6 | 医薬品・バイオテクノ・ライフ | 3.5% |
7 | 消費者サービス | 3.0% |
8 | 食品・飲料・タバコ | 3.0% |
9 | 生活必需品流通・小売り | 2.9% |
10 | 自動車・自動車部品 | 2.9% |
上位10業種合計 | 84.2% |
※2025年4月30日現在
②組入上位10銘柄
銘柄 | 業種 | 構成比率 | |
1 | アップル | テクノロジー・ハードウェア | 8.5% |
2 | マイクロソフト | ソフトウエア・サービス | 7.9% |
3 | エヌビディア | 半導体・半導体製造装置 | 7.1% |
4 | アマゾン・ドットコム | 一般消費財・サービス流通 | 5.3% |
5 | ブロードコム | 半導体・半導体製造装置 | 4.0% |
6 | メタ・プラットフォームズ | メディア・娯楽 | 3.3% |
7 | ネットフリックス | メディア・娯楽 | 3.2% |
8 | コストコ・ホールセール | 生活必需品流通・小売り | 2.9% |
9 | テスラ | 自動車・自動車部品 | 2.9% |
10 | アルファベット(グーグル) | メディア・娯楽 | 2.5% |
上位10銘柄合計 | 47.6% |
※2025年4月30日現在
4 NASDAQの活用方法
NASDAQを使った投資方法には、指数に連動したものに投資する方法と上場している個別株に投資する方法の2種類があります。
(1)インデックス投資(NASDAQ指数連動型ETF)
NASDAQ指数への投資方法として、最もポピュラーなのがETFや投資信託を通じたインデックス投資です。
①メリット
・個別株を選ばなくても、成長企業に広く分散投資できる
・リバランスが自動で行われ、メンテナンス不要
・少額から積立が可能(特に投資信託)
②活用法
・毎月一定額を積立する「ドルコスト平均法」で長期運用
・株式比率の中で成長セクターの割合を高めたいときに組み込む
・他の指数(S&P500など)と組み合わせてポートフォリオを最適化
(2)個別株投資(NASDAQ構成企業)
成長性の高い企業に集中投資したい場合は、個別銘柄を直接購入する方法も有効です。
①魅力的な投資対象例
・NVIDIA:AI・自動運転・データセンターで世界をリード
・Amazon:EコマースだけでなくAWSの収益が成長ドライバー
・Meta:広告ビジネスの再成長とAI・VR分野への投資が加速
・ASML:半導体製造装置の分野で世界的な独占的ポジション
②メリット
・成功すれば高いキャピタルゲインが期待できる
・自分の投資テーマや信念を反映させやすい
③デメリット
・業績悪化や金利上昇などで大きな値下がりリスク
・分散効果が薄く、特定企業の動向に大きく左右される
④個別株投資のコツ
・業績やビジネスモデル、財務指標をよく調査する
・1銘柄への依存度を下げ、複数の成長株に分散
・長期目線でのホールドを前提に、短期の値動きに振り回されない
5 投資における注意点とリスク管理
NASDAQ関連投資にはリターンの期待値が高い一方で、いくつかの特有のリスクが存在します。
(1)ボラティリティ(価格変動)の高さ
ハイテク株は業績予想や金利動向に敏感に反応するため、株価が短期間で大きく上下することがあります。2022年や2020年のような金利上昇局面では、NASDAQ指数が急落することもありました。
<対策>
・一括投資ではなく、積立投資で時間分散
・リスク許容度に応じてポートフォリオ内の比率を調整
(2)セクター集中リスク
NASDAQ100指数はテクノロジーや消費関連に偏っており、金融・資源・公益といったディフェンシブな業種はほぼ含まれていません。そのため、経済サイクルによっては大きくアンダーパフォームすることもあります。
<対策>
・S&P500や全世界株式などとの組み合わせでバランスを取る
・投資テーマごとに複数のETFを活用
(3)為替リスク
NASDAQは米ドル建てで運用されるため、日本円で投資する場合は為替の変動による影響を受けます。ドル高・ドル安によって、円換算リターンが大きく異なることもあります。
<対策>
・為替ヘッジ付き商品を選ぶ(ただしヘッジコストに注意)
・為替も含めた長期的なリターンを見据える
6 まとめ
NASDAQは、革新的な企業が集まり、テクノロジーと成長性を象徴する市場として、投資家から高い注目を集めています。
NASDAQ100などの指数を通じて、将来性ある企業群に分散投資できる点は大きな魅力です。
特に米国経済やIT分野の未来に期待する投資家にとって、有力な投資先といえるでしょう。
一方で、リターンが高い反面、ボラティリティやセクター偏重といったリスクも抱えています。
投資判断にあたっては、自身のリスク許容度や運用期間を踏まえた戦略が欠かせません。
NASDAQへの投資は、個別株であれETFであれ、長期的な視野と分散を意識することが成功の鍵です。
イノベーションの波に乗りながら、着実に資産形成を進めるための一手段として、NASDAQの活用を検討してみてはいかがでしょうか。