いまさら聞けない日経平均株価指数

株式投資に興味を持ったとき、あるいはニュースで経済動向をチェックするとき、「日経平均株価」や「TOPIX(東証株価指数)」といった言葉をよく耳にすることでしょう。
これらは日本の株式市場を代表する株価指数(インデックス)であり、投資信託やETF(上場投資信託)の運用方針や市場全体の動向を知るうえで、非常に重要な指標です。 

特に「日経平均株価指数」(以下、日経平均または日経225)は、日本株を代表する指数として世界中の投資家に注目されています。
本コラムでは、日経平均の仕組みや特徴、算出方法などを解説し、なぜこの指数を理解することが投資判断に役立つのかをお伝えします。 

1 日経平均とは? 

(1)概要 

日経平均は、東京証券取引所プライム市場に上場している企業の中から、日本経済新聞社が選んだ225銘柄の株価を基に算出される株価指数です。
1950年に東京証券取引所が初めて算出を開始し、その後1970年に日本経済新聞社に引き継がれ、以降リアルタイムで算出が行われています。 

この指数は「日本を代表する225社の株価をもとにしたシンプルな平均」とも言え、日本の株式市場の動向を把握するうえでのベンチマーク(比較基準)として広く活用されています。 

(2)構成銘柄の選定基準

 日経平均に採用される225社は、次のような観点で選ばれます。 

① 流動性 
  日々の売買高や出来高が多く、市場で活発に取引されているかどうか。 

② 業種のバランス 
  33業種分類(東証の業種分類)に基づき、特定分野に偏らないよう配慮。 

③ 企業の代表性 
  業界を代表する企業であり、一定の知名度やブランド力を持っているか。 

④ 上場市場
  原則として東京証券取引所の「プライム市場」に上場していること。 

⑤ 指数全体の構成バランス 
  指数全体が特定銘柄や業種に偏らないよう調整される。 

(3)採用銘柄の管理と入れ替え 

このような多面的な基準をもとに、日本経済新聞社が年1回(通常は10月)定期的に構成銘柄の見直しを行います。
加えて、次のような状況が発生した場合には、臨時入れ替えが行われます。 

① 企業の上場廃止 

② 他社との合併や分割、持株会社化などの企業再編 

③ 流動性の極端な低下や業績の長期低迷 

なお、構成銘柄が変わっても指数の連続性が維持されるよう、「除数」と呼ばれる調整項目を使って計算されます。 

(4)日経平均の算出方法と特徴 

日経平均は「単純平均型の株価指数」です。 

具体的には、採用された225銘柄の株価を合計し、それを「除数」と呼ばれる一定の調整値で割って算出されます。
除数は、株式分割や併合、銘柄の入れ替えなどによって変動するため、指数の継続性を保つために随時調整されます。 

<計算式(簡易)> 
日経平均株価 = 採用225銘柄の株価合計 ÷ 除数 

2 日経平均の主な業種と銘柄 

(1)構成上位10業種 

 業種 構成比率 
1 電気機器 23.7% 
2 小売業 13.6% 
3 情報・通信業 12.4% 
4 医薬品 6.3% 
5 化学 5.7% 
6 サービス業 4.9% 
7 機械 4.5% 
8 輸送用機器 4.2% 
9 精密機器 3.7% 
10 卸売業 3.3% 
 上位10業種合計 82.3% 

※ 2025年4月30日現在 

(2)構成上位10銘柄 

 銘柄 業種 構成比率 
1 ファーストリテイリング 小売業 10.4% 
2 東京エレクトロン 電気機器 5.9% 
3 アドバンテスト 電気機器 4.3% 
4 ソフトバンクグループ 情報・通信業 4.0% 
5 KDDI 情報・通信業 2.8% 
6 中外製薬 医薬品 2.3% 
7 リクルートホールディングス サービス業 2.2% 
8 TDK 電気機器 2.1% 
9 テルモ 精密機器 2.0% 
10 信越化学工業 化学 2.0% 
 上位10銘柄合計  38.0% 

※ 2025年4月30日現在 

3 日経平均の特徴

 日経平均には、さまざまな特徴(メリット・デメリット)があるので、それを理解した上で活用することで効果的な使い方ができます。 

(1)メリット 

① 長い歴史と信頼性 

1949年に算出が始まり、70年以上にわたって日本経済の動きを映し出してきた実績があります。
個人・機関を問わず、投資家に広く利用される代表的な指標です。 

② 分析・情報が豊富 

日経平均は、各種経済メディア、証券会社、金融機関によって日々分析が行われており、初心者でも参考となる情報が得やすい点が魅力です。 

③ 関連商品が豊富 

日経平均に連動したETF(上場投資信託)や先物、オプション取引などが充実しており、様々な投資手段が選べます。 

④ 業種のバランスに配慮

 225銘柄は複数業種から選ばれており、セクター偏重にならないよう調整されています。
一定の分散効果が期待できる構成です。 

(2)デメリット・課題 

① 株価の高い銘柄の影響が大きい 

株価が高い企業の動きに指数全体が左右されやすい点が特徴です。たとえば、ファーストリテイリングや東京エレクトロンなど、1株あたりの価格が数万円以上の銘柄は、わずかな変動でも指数に大きな影響を与えます。 

② 新興企業や成長企業の比率が少ない

 225銘柄の選定基準により、上場して間もないベンチャー企業やテック系スタートアップが採用されにくい傾向があります。そのため、新しい成長分野の動きを捉えきれないこともあります。 

③ 時価総額との乖離 

時価総額の大きな企業が指数への影響力を必ずしも持っていないため、経済全体の実態とのズレが生じる場合があります。特に、TOPIXのように時価総額でウエイトが決まる指標と比べると、違いが際立ちます。 

4 日経平均の活用方法 

日経平均は投資対象としてだけでなく、市場の温度を測る「体温計」のような役割も果たします。ここでは、主な活用例を4つ紹介します。 

(1)市場全体の動向把握に使う 

日経平均は、メディアで最も頻繁に引用される指標の一つです。 

・「本日の日経平均は前日比+300円で取引を終了」 

・「米国株安を受けて、日経平均が急落」 

・「年初来高値を更新」 など 

これらは市場のムードを把握するための「バロメーター」として機能しており、相場の方向性をつかむ第一歩として有効です。 

(2)インデックス投資の対象にする 

日経平均に連動するETFや投資信託を活用することで、225銘柄への分散投資を手軽に実現できます。
代表的なETFには以下のようなものがあります。 

・NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信(1321) 

・iシェアーズ 日経225 ETF(1329) 

・ダイワ上場投信-日経225(1320) 

これらの商品は、少額から購入できるため、初心者にも人気があります。 

(3)先物・オプション取引での活用 

日経平均は、日経225先物・オプションなどデリバティブ取引の原資産としても使われています。
これらの金融商品は、ヘッジ取引やレバレッジ投資、裁定取引など、より高度な戦略に用いられます。 

最近では、個人投資家による先物・オプションの活用も増加しており、ポートフォリオのリスク管理や短期売買の一手段として注目されています。 

(4)テクニカル分析の基礎として 

日経平均のチャートは、テクニカル分析のベースとしても広く利用されています。
移動平均線、MACD、RSIなどの指標と組み合わせることで、売買タイミングを図る戦略に活用できます。 

5 日経平均を使った投資戦略

 

(1)長期積立型インデックス投資 

毎月一定額を日経平均連動ETFや投資信託に積み立てる「ドル・コスト平均法」を用いた戦略です。 

①メリット 

・相場の上下に一喜一憂せずに投資を継続できる 

・安値時に多く、高値時に少なく買うことで取得単価を平準化 

・長期保有による複利効果を得やすい 

②戦略例 

・「1321(NEXT FUNDS 日経225連動型ETF)」などのETFや投資信託などに定額を積立 

・10年~20年スパンで資産形成を目指す 

(2)テクニカル分析による短中期戦略 

相場のトレンドや転換点を分析し、売買のタイミングを狙う戦略です。 

①活用指標例 

・ゴールデンクロス(5日線が25日線を上抜け) 

・RSIが30以下 → 買いサイン 

・サポートラインでの反発を狙う 

②注意点 

・チャートの見方に一定のスキルが必要 

・相場に張り付く必要があり、時間的余裕が求められる 

(3)暴落時の逆張り投資 

市場が急落した場面を「買いのチャンス」と捉える逆張り型の戦略です。日経平均が短期間で大幅に下落したときに、割安水準で仕込むことを狙います。 

①判断材料 

・PERが歴史的低水準 

・200日移動平均線からの大幅乖離 

・一時的な外的要因(災害、政策ショックなど) 

②留意点 

・下落が長期化するリスクあり 

・投資資金の余裕が必要 

(4)レバレッジ型ETFによる短期集中戦略

 日経平均の2倍の値動きを目指すレバレッジ型ETF(例:1570)を活用する戦略です。 

①特徴

 ・上昇局面では短期間で大きな利益を狙える 

・デイトレやスイングトレード向き 

②注意点 

・下落局面では2倍以上の損失となる可能性 

・長期保有による価格の「減価」に注意が必要 

(5)先物・オプションによるリスクヘッジ戦略 

日経225先物やプットオプションを活用して、保有株の下落リスクを抑える「ヘッジ戦略」も有効です。

①活用例 

・現物株を保有しつつ、日経225先物を「売り建て」して下落をカバー 

・大きな下げ相場を想定した「プットオプション購入」 

②留意点 

・レバレッジ取引であるため、損益の変動が大きい 

・投資経験が浅い人にはハードルが高い 

6 まとめ 

日経平均株価は、長い歴史と高い知名度を持つ、日本を代表する株価指数です。
その特徴を理解すれば、単なる相場の指標としてだけでなく、具体的な投資商品・戦略としても有効に活用できます。 

市場の動向を把握したい人から、長期積立を考える人、さらには短期トレードやヘッジを狙う上級者まで、幅広い投資家にとって「知っておくべき基礎知識」といえるでしょう。 

投資初心者の方も、まずはETFなどで小額から「日経平均との上手な付き合い方」を学んでみるのがおすすめです。