やっぱり長期投資がいいの?

「投資をするなら長期投資が良い!」というフレーズを、書籍やネット記事で見たことがある方は多いのではないでしょうか。
しかし、なぜ長期投資が推奨されるのか、その理由を明確に理解している人は意外と少ないかもしれません。
長期投資は、短期間での値上がり益を狙う投機とは異なり、時間の力を活かした堅実な資産形成法です。
複利の恩恵を最大限に享受できるうえ、日々の相場変動に一喜一憂せずにすむという大きな利点があります。一方で、継続には根気と計画性が必要であり、一定のリスクも伴います。
この記事では、長期投資の基本的な考え方から、実際の運用に役立つメリットや注意点までを、初心者にもわかりやすく、かつ専門的な視点を交えて解説します。
目次
1 長期投資とは何か?
(1)「長期」とはどのくらいの期間?
長期投資とは、文字通り長期間にわたって資産を投じる投資手法です。
明確な定義は存在しませんが、一般的には「10年以上の保有期間」を想定することが多いです。
金融業界では「長期=5年以上、中期=1〜5年、短期=1年未満」と区分することがありますが、資産形成を目的とする場合は10年、20年といったスパンでの運用が理想的です。
仮に40歳から投資を始めた場合、10年後には50歳、20年後には60歳になっています。
老後資金や子どもの教育資金といった長期的な目標を見据えたとき、今からの一歩が大きな成果につながるのです。
(2)長期投資の本質
長期投資は、短期的な価格の上げ下げを狙うのではなく、投資対象(株式・投資信託など)の将来的な成長力に期待して、じっくりと保有を続けることが基本です。
特に株式投資では、企業の利益成長とともに株価や配当金が上昇することを狙い、安定的な資産形成を目指します。
長期投資の中心的な考え方は「バイ・アンド・ホールド(買って持ち続ける)」であり、企業の成長に伴走するスタイルであるため、投資先企業の財務状況やビジネスモデル、将来性などを見極める力が重要です。
2 長期投資のメリット
長期投資にはいくつかのメリットがあります。主なメリットを紹介します。
① 複利効果で資産が雪だるま式に増える
長期投資における最大の魅力は「複利効果」です。
投資の世界では「複利は人類最大の発明」と言われています。
複利とは、運用で得た利益を再投資し、その利益にもさらに利益がつく仕組みを指します。
資産が利益を生み、その利益が再び資産となって利益を生む……という循環を繰り返すことで、時間が経つほど資産の増加スピードが加速します。
【シミュレーション】
100万円を年利5%で運用した場合、以下のような違いが出ます(税引き前・年1回複利とする):
運用期間 | 単利(元本100万円) | 複利(元本100万円) |
10年 | 150万円(+50万円) | 約162.9万円(+62.9万円) |
20年 | 200万円(+100万円) | 約265.3万円(+165.3万円) |
30年 | 250万円(+150万円) | 約432.2万円(+332.2万円) |
わずか5%の利回りでも、30年間の複利運用で4倍以上の資産となるのです。
運用期間が長くなるにつれて、複利の効果が爆発的に効いてくるのが分かります。
長期投資とは、言い換えれば「時間を味方にする投資法」なのです。
なお、著名な投資家ウォーレン・バフェットもこの複利の力を最大限に活かした長期投資家の一人と言われています。
彼の資産のほとんどは50代以降に形成されたといわれており、若いうちから始めることの重要性を物語っています。
② 短期的な値動きに惑わされずに済む
短期投資やデイトレードでは、1日の中でも数%の値動きが発生し、それによって利益を狙う必要があります。そのため、常にマーケットを注視しなければならず、精神的にも時間的にも大きな負担となります。
一方、長期投資では、日々の値動きに過敏になる必要はありません。
短期的には株価が下落することがあっても、長期的に経済や企業が成長すれば、株価もそれに伴って上昇していくというのが基本的な考え方です。
特に、S&P500などの代表的な株価指数は、過去に何度も暴落を経験しながらも、長期的には右肩上がりの成長を遂げてきました。
こうした市場の大きな流れに乗ることで、個人投資家も安定的なリターンを得ることが可能になります。
③ 手数料や税金の負担を抑えられる
投資にかかるコストの一つが「売買手数料」です。
短期売買では、頻繁な取引によってこの手数料が累積し、実質的な利益を圧迫します。加えて、取引ごとに税金(譲渡益課税)も発生します。
長期投資では、売買回数が少なくなるため、これらのコストを最小限に抑えることが可能です。
特に「NISA」や「iDeCo」などの税制優遇制度を活用することで、一定期間にわたって非課税で資産形成ができるため、コスト面での優位性は非常に高くなります。
さらに近年は、購入手数料が無料(ノーロード)の投資信託も増えており、個人投資家にとって投資のハードルは大きく下がっています。
④ 積立投資との相性が良い
長期投資の実践方法として、積立投資は非常に有効です。
毎月決まった額を継続的に投資することで、価格の上下にかかわらず投資を続けることができます。
この手法は「ドルコスト平均法」と呼ばれ、購入単価を平準化し、リスクを分散する効果があります。
たとえば、価格が安いときには多くの数量を、高いときには少ない数量を購入することで、平均購入単価を下げることができ、長期的に見ると有利に働きます。
また、定期的に投資することで投資タイミングを選ぶストレスからも解放され、感情に左右されない安定した運用が可能になります。
3 長期投資の実績と期待リターン
実際に長期投資を行った場合、どの程度のリターンが期待できるのでしょうか?
以下は、過去20年間(2004年〜2023年)の代表的な資産クラスごとのパフォーマンスです。
資産クラス | 20年間の成長倍率 | 年平均リターン | 参考指数 |
日本債券 | 約1.3倍 | 約1.3% | NOMURA-BPI総合 |
外国債券 | 約2.2倍 | 約4.0% | FTSE世界国債index |
日本株式 | 約3.4倍 | 約6.3% | TOPIX |
外国株式 | 約6.1倍 | 約11.0% | MSCI-KOKUSAI |
金 | 約6.7倍 | 約11.6% | 店頭小売価格 |
(※すべて税金・手数料を除いた数値で、配当や利息は再投資した場合)
これらの実績はあくまで過去のものであり、将来を保証するものではありませんが、長期的に見れば資本市場が経済成長に伴ってリターンを生んできたことを示しています。
特に注目すべきは外国株式や金の高いリターンであり、長期目線で見ることでリスク資産でも魅力的な成果が期待できることがわかります。
4 長期投資の注意点とその対策
長期投資には多くのメリットがありますが、注意すべき点も少なくありません。
以下では、代表的なリスクとその対策を整理します。
① 結果が出るまで時間がかかる
長期投資は、短期で利益を得る手法ではありません。
企業の成長や経済の拡大といった「時間がかかるプロセス」に期待するため、数年〜数十年かかることも珍しくありません。
<対策>
・焦らない
短期の損益に振り回されず、10年、20年先を見据える姿勢が必要です。
・相場から離れる
値動きが気になる場合は、頻繁にチェックせず、半年に1回など定期的に確認するにとどめましょう。
・投資ルールを明確にする
自分なりの投資方針(いつ投資し、いつ見直すかなど)を決めておくことで、感情的な判断を避けられます。
② 途中でやめると効果が減る
複利の恩恵を最大限に活かすには、運用を継続することが不可欠です。
途中で売却してしまうと、再投資による利益の拡大が止まってしまい、長期投資のメリットが半減してしまいます。
<対策>
・無理のない金額で始める
継続するには生活に支障のない金額で投資することが大切です。
・一時的なストップも柔軟に
収入が減った場合は積立額を減らすなどして対応し、資産を手放さないように工夫しましょう。
③ 必ずしも利益が出るとは限らない
長期投資であっても、すべての投資先が期待通り成長するとは限りません。
企業の業績が悪化すれば株価が下落し、思わぬ損失を抱えるリスクもあります。
<対策>
・分散投資
複数の資産に分散して投資することで、個別銘柄のリスクを軽減できます。
・プロに任せる
投資信託やETFを利用すれば、プロの運用者が分散投資を行ってくれるため、初心者でも安心して長期運用が可能です。
5 長期投資を成功させるための心得
最後に、長期投資を成功させるための基本的な心得をまとめます。
①早く始める
複利効果を最大限活かすためには、早ければ早いほど有利です。
②自分に合ったスタイルを選ぶ
無理のない積立額やリスク許容度を見極め、自分に合った資産配分を選びましょう。
③途中であきらめない
暴落や損失が発生しても、あわてて売却しないことが長期的な成功につながります。
6 まとめ
長期投資は、短期的な値動きに惑わされず、じっくりと資産形成を目指す投資手法です。
複利の力を最大限に活かし、コストを抑えながら、時間を味方につけることができます。
注意点はありますが、分散や積立などの工夫によって、リスクを抑えながら安定したリターンを目指すことが可能です。
焦らず、ブレずに、長期的な視野で取り組めば、将来の自分にとって大きな財産となるはずです。
投資は「時間」という最強の味方とともに進める旅路なのです。