ポートフォリオを組もう!

ポートフォリオを組もう

「投資を始めたいけど、何をどれだけ買えば良いのかわからない」。
これは、投資初心者が最初に直面する共通の悩みです。
特に投資信託のように種類が多く、それぞれに特徴がある商品は、選ぶだけでも一苦労です。 

本コラムでは、資産形成の基本となる「ポートフォリオ」の考え方と構築方法、さらに実践的な管理のポイントについて、投資信託を例にわかりやすく解説していきます。

1 ポートフォリオ構築の基本3原則 

ポートフォリオとは、複数の金融商品を組み合わせた資産の構成のことです。
適切に構築されたポートフォリオは、リスクを抑えながら安定的なリターンを目指すうえで非常に有効です。 

ここでは、投資信託を使ってポートフォリオを組む際に注意すべき3つのポイントを解説します。 

(1)低コストの商品を選ぶ 

投資における「コスト」は、目には見えにくいですが、長期的な資産運用において大きな差を生む重要な要素です。投資信託には以下のようなコストが発生します。 

①信託報酬(運用管理費用) 

②購入時手数料 

③信託財産留保額(売却時にかかる手数料) 

たとえば、同じような投資対象の商品であっても、信託報酬が年1.5%のファンドと0.1%のファンドでは、20年後には驚くほどの差が生じます。 

具体的には、100万円を年利5%で20年間運用した場合、コストが0.1%のファンドでは約265万円になりますが、年1.5%のコストがかかると約214万円まで目減りします。50万円以上の差です。
だからこそ、投資信託を選ぶ際は、できる限りコストの低いインデックス型商品を選ぶのが基本です。 

(2)商品の中身を理解する 

どんなに低コストでも、自分が何に投資しているのか分からない商品を選んではいけません。
投資信託は「分かりにくい商品」だと思われがちですが、運用報告書や目論見書を確認することで、意外としっかりとした情報を得ることができます。 

たとえば「国内株式に投資」といっても、大型株中心なのか、新興企業も含まれるのかでリスクとリターンの性質が大きく異なります。
また、ファンドの中には株式と債券を混在させた「バランス型」の商品もあります。 

内容を理解せずに複数の類似商品を購入してしまうと、思ったようにリスク分散がされていなかったり、運用の重複が起きていたりすることもあります。 

商品を選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。 

①投資対象(地域、資産クラス) 

②運用方針(アクティブorインデックス) 

③過去の運用成績(5年以上が目安) 

④純資産総額(規模が大きいほど安定) 

(3)資産管理をシンプルにする 

投資初心者がやってしまいがちなのが、情報に振り回されて投資信託を買いすぎてしまうことです。
話題の商品や成績の良かったものに飛びついていくうちに、いつの間にか10本以上の投資信託を保有していた…というのはよくあるケースです。 

しかし、ファンドが増えると資産全体のバランスを把握しづらくなり、運用が複雑化してしまいます。 

管理をシンプルにするには、投資対象を資産クラスごとに1本ずつ選ぶ「コア資産」の考え方がおすすめです。
国内株式、国内債券、海外株式、海外債券の4つを基本に据え、それぞれ1本ずつインデックスファンドを選ぶだけでも、立派なポートフォリオになります。 

2 投資初心者におすすめのポートフォリオ例 

投資初心者だけでなく、資産運用のプロである機関投資家もインデックスファンドを活用しています。
その特徴は、「市場全体に連動する」ことです。 

短期的には下落することもありますが、過去の実績では長期的には経済成長とともに資産も成長してきました。長期・分散・積立という王道を守ることで、時間が資産を増やしてくれます。 

それでは、実際に投資初心者がインデックスファンドを使って、どのようにポートフォリオを組めばよいのか、具体的に見ていきましょう。 

【各資産クラスのおすすめインデックス】 

資産クラス 代表的なインデックス 主なファンド例 
国内株式 TOPIX、日経平均 eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX) 
国内債券 NOMURA-BPI総合 eMAXIS Slim 国内債券インデックス 
海外株式 MSCIコクサイインデックス eMAXIS Slim 先進国株式インデックス 
海外債券 FTSE世界国債インデックス eMAXIS Slim 先進国債券インデックス 

上記のように、信託報酬が年0.1~0.2%台の超低コストファンドを1本ずつ選ぶだけで、日本と海外、株式と債券のバランスが取れた分散型ポートフォリオを作ることができます。 

初めはこの4本で十分です。将来的に資産規模や経験値が上がったら、新興国株式やREIT(不動産投資信託)を追加していくのも一つの方法です。 

3 ポートフォリオの管理方法とリバランス 

ポートフォリオは「作って終わり」ではなく、運用していく中でバランスを保つことが大切です。
そのための管理の基本と、リバランスという重要な概念について解説します。 

(1)ポートフォリオの管理方法

 資産運用においては、シンプルなルールを守って継続することが、投資初心者にとって最も効果的なアプローチです。 

たとえば以下のようなルールを決めておきましょう。 

①毎月一定額を積立てる(ドルコスト平均法) 

②年に1回、資産配分を見直す(リバランス) 

③値動きに一喜一憂しない 

ルールに基づいた運用は感情に左右されにくく、合理的なポートフォリオ管理を可能にします。長期的な視野で資産の成長を見守ることが重要です。 

(2)リバランスの考え方 

リバランスとは、「崩れた資産配分を元に戻す作業」です。 

たとえば、国内株式:25%、海外株式:25%、国内債券:25%、海外債券:25%と均等に投資していた場合でも、相場の変動により、半年後には国内株式が35%、債券が15%になっているということも起こり得ます。 

このまま放置すると、当初の意図したリスク管理が機能しません。
そこで、資産配分を元に戻すことで、リスクとリターンのバランスを最適な状態に保ちます。 

①リバランスの方法 

主なリバランス方法は2つです。 

ア.売買によるリバランス 

増えすぎた資産を一部売却し、減った資産に充てる方法。最も確実にバランスを整えられますが、売却益に課税(約20%)される場合があるため、タイミングには注意が必要です。 

イ.追加投資によるリバランス 

売却は行わず、減った資産クラスに新たな資金を投入する方法。追加資金が必要になりますが、課税されない点がメリットです。投資初心者にはこちらの方法が取り組みやすいでしょう。 

②リバランスのタイミング 

リバランスは年に1回、あるいは半年に1回のペースで十分です。
基準としては、資産配分が±5%以上崩れたときが目安です。 

たとえば、「国内株式が30%を超えた」「海外債券が20%を下回った」などの場合は、調整を検討しましょう。頻繁に行いすぎると、かえって取引コストや税負担が増えるため注意が必要です。 

5 まとめ 

投資において最も重要なのは、「続けること」です。
相場が好調なときも不調なときも、ルールを守って積み立て、年に1~2回リバランスをする――このシンプルな運用を5年、10年と続けることで、資産は着実に積み上がっていきます。 

相場を読む必要はありません。
むしろ相場に振り回されないためにも、ルールと仕組みで資産運用を自動化していくことが、初心者にとって最善の道なのです。 

まずは少額からでも構いません。一歩踏み出し、長期的な視点で、堅実に資産形成をスタートしましょう。