リスク許容度って何?

資産運用に関する情報を集めていると、「リスク許容度」という言葉を目にする機会があると思います。
「自分のリスク許容度に合った投資商品を選びましょう」と言われても、「そもそもリスク許容度って何?」「自分がどのくらいのリスクに耐えられるのかよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。
今回は、「リスク許容度」の意味をわかりやすく解説しながら、自分に合った投資スタイルを見つけるためのヒントをお届けしたいと思います。
目次
1 リスク許容度とは?
投資における「リスク」とは、将来の運用成果が予測通りにならない可能性のことを指します。
リターン(利益)の振れ幅の大きさ、つまり「価格変動の幅」を表す指標でもあります。
例えば、株式は値動きが大きいため「リスクが高い」資産とされる一方、国債や定期預金のように価格がほとんど動かないものは「リスクが低い」とされます。
そして「リスク許容度」とは、自分がどの程度のリスクを受け入れられるか、つまり資産が一時的に目減りしたときにどこまで冷静でいられるか、投資を続けられるかという「精神的・経済的な耐性」を表します。
リスク許容度は人によって異なり、年齢、収入、家族構成、投資経験、性格などさまざまな要因によって決まります。また、経験を積むことでリスク許容度が高くなることもあります。
例えば、株式投資を始めたばかりの人が、少しの下落で毎日チャートが気になって仕事が手につかない、眠れないといった状態に陥ることがあります。
これは、その人のリスク許容度を超えた投資をしているサインです。
このような場合は、投資方針を見直し、リスクを抑えた運用スタイルに切り替えることが大切です。
2 自分のリスク許容度を見つけるポイント
リスク許容度を正しく理解するには、以下の5つの観点から自分自身を見つめ直してみると良いでしょう。
(1)年齢と投資可能期間
若い人は、投資に使える期間が長いため、一時的な下落に対して時間を味方にできます。
例えば、30歳であれば、退職までの数十年間、資産を運用し続けることが可能です。その間に一時的な下落があっても、長期的には回復する可能性が高く、時間の分散がリスクを緩和してくれます。
一方、退職が近い年代の方や、資金が必要となる時期が迫っている方は、損失の回復にかけられる時間が限られるため、リスクを抑える運用が求められます。
(2)収入水準と安定性
収入が安定している人、あるいは今後の収入増加が見込める人は、将来のキャッシュフローに対する安心感があります。
仮に投資資産が一時的に目減りしても、生活に支障をきたすことなく投資を続けられるため、リスクを取りやすい傾向にあります。
一方で、収入が不安定な職業や、近い将来に大きな支出が予定されている場合は、資産を大きく減らすリスクのある投資は慎重になるべきです。
(3)保有資産と余裕資金
同じ収入でも、保有している資産の総額や流動性の高さ(すぐに現金化できるか)によって、リスクへの対応力は大きく変わります。
例えば、生活資金とは別に充分な余裕資金があれば、リスクの高い投資にも挑戦しやすくなります。
投資の基本は「生活資金と投資資金を分けること」です。
生活費までリスク資産に投じると、価格が下がったときに冷静な判断ができなくなります。
(4)性格・心理的耐性
人によって、同じ価格変動に対する感じ方は異なります。
10%の下落で不安になってしまう人もいれば、30%下がっても平然としていられる人もいます。
過去にどのような行動をとったかを振り返るのも有効です。
例えば、コロナショック(2020年)やリーマンショック(2008年)のような相場急変時に、冷静に対応できたかどうかは一つの判断材料になります。
(5)投資の知識と経験
知識と経験が豊富であれば、相場の一時的な変動に過剰に反応せず、合理的に行動できるようになります。
長期的な視点や分散投資、複利の効果など、基本的な投資理論を理解していれば、下落時にも「これは一時的な調整だ」と受け止めることができます。
初心者はまず少額からスタートし、自分の感情の動きと向き合いながら経験を積むことが大切です。
3 リスク許容度を知るための目安
それでも「自分のリスク許容度がわからない」という方は、以下のような分類を参考にして自分のリスク許容度を見つけてください。
(1)リスク許容度が低い人の特徴
・ 元本割れが心配で投資がストレスになる
・ 少しでも資産が減ると売りたくなる
・ 銀行預金や国債など、元本が保証されている商品が安心できる
・ 投資よりも貯蓄を優先したい
(2)リスク許容度が中程度の人の特徴
・ 投資に興味があり、勉強を始めている
・ 株価が乱高下すると気になるが、冷静さは保てる
・ 一時的な10%程度の下落でも積立を続けられる
・ 株式・債券・投資信託などをバランスよく保有している
(3)リスク許容度が高い人の特徴
・ 投資が生活の一部として習慣になっている
・ 相場の上げ下げを冷静に受け止められる
・ 一時的に資産が10%以上減っても慌てず対応できる
・ 情報収集や分析を自ら行い、戦略を持っている
4 リスク許容度別投資方法
資産運用を始めるにあたり、「どの商品を買えばいいのか」「どれくらい投資すべきか」と悩む方も多いでしょう。
ここでは、リスク許容度を「低・中・高」の3つに分け、それぞれに適した投資アプローチを紹介します。自分の性格や経済状況に照らし合わせながら、どの投資方法がいいか考えてみてください。
(1)リスク許容度が低い人
リスク許容度が低い方の多くは、投資経験が浅く、元本割れへの不安が強い傾向があります。
これはごく自然な反応で、ほとんどの人が最初はそうです。
まずは “投資に慣れる”ことを最初の目標にしましょう。
このタイプの方は、まずは預貯金や債券など安定資産を中心にし、投資信託など分散性の高い商品から少額で始めてみるのがおすすめです。
投資信託の購入方法は、「少額からの積立投資(ドルコスト平均法)」がおすすめです。
例えば、手元に100万円の余裕資金があっても、いきなり全額を投入せず、毎月1万円ずつ全世界株式に連動する投資信託に積み立てていくというスタイルです。
仮に積立開始から3か月後に株式市場が10%下落しても、その時点の投資総額3万円に対して損失は3,000円ほど。手元にはまだ97万円以上残っており、大きな精神的ダメージを避けながら投資経験を積むことができます。
積立投資の主なメリットとしては、以下のことが挙げられます。
① 価格変動リスクの分散
高い時には少なく、安い時には多く買うことで、購入単価が安くすることができる。
② 複利効果の活用
再投資によって利益が利益を生む仕組みを作ることにより、複利効果の恩恵を得ることができる。
この段階では「損をしないこと」が目的ではなく、「価格が変動するという感覚に慣れること」が目標です。経験を積むにつれて、自信と知識が身につき、リスクに対する耐性も高まっていきます。
(2)リスク許容度が中程度の人
このタイプの方は、投資に対する一定の理解と経験があり、「もっと増やしていきたい」「積立以外の方法も試したい」という意欲がある段階です。
ここでおすすめなのは、積立投資額の増加に加えて「ETF(上場投資信託)」への投資です。
ETFとは、複数の銘柄に分散投資できる投資信託の一種で、証券取引所に上場しているため、株式と同じようにリアルタイムで売買できます。
ETFの主なメリットとしては、以下のことが挙げられます。
① 指数に連動
「日経平均」「TOPIX」などの指数に連動するため、値動きの傾向がわかりやすい。
② 分散効果
1本で数十から数百銘柄に分散されているため、個別株に比べてリスクが低い。
③ 取引の柔軟性
市場が開いている間はいつでも売買可能である。
④ 低コスト
信託報酬が比較的安く、長期投資に適している。
一方で、ETFは値動きのある商品です。価格が上がったときに喜び、下がったときに不安になって売ってしまうと、「安く買って高く売る」という投資の基本に反してしまいます。
大切なのは、相場に振り回されず、長期的な視点を保つことです。
少額ずつ定期的に購入し、値動きに慣れながら運用を継続していきましょう。
また、できるだけ多くの資産クラスに分散する「アセットアロケーション」の考え方を取り入れると、より安定した運用が可能になります。
(3)リスク許容度が高い人
このタイプの方は、すでに株式・投資信託・ETFなど基本的な商品への投資経験があり、資産運用に対するリテラシーも高い傾向があります。
この段階では、「自分に合った投資スタイル」や「中長期的な資産形成戦略」の確立が重要になります。
検討したい投資方法としては、以下のものが挙げられます。
① テーマ型投資(AI、再生可能エネルギー、医療などの成長分野)
② 個別株投資(成長株、割安株、高配当株など戦略的な選別)
③ REIT(不動産投資信託)
④ セクター分散・地域分散の強化(米国、欧州、新興国など)
これらの投資では、情報収集力と分析力が大きな武器になります。
ファンダメンタル分析(企業の財務状況や業界動向)やテクニカル分析(チャートパターン)を駆使することにより、自分なりブレない投資行動が確立されます。
また、自分の仮説をもとに小さな投資を行い、結果を検証しながらスタイルを磨いていくことがレベルアップに繋がります。
そのためには、失敗を恐れず、学びの機会と捉える姿勢が大切です。
投資の世界で成功している先人たちも、例外なく小さな失敗を積み重ねながら自分のスタイルを築いています。
5 まとめ
リスク許容度とは、「どれくらいの損失までなら冷静に耐えられるか」を示す、自分だけの投資の“ものさし”です。これを正しく理解し、自分の年齢、資産状況、性格などに合わせた運用スタイルを選ぶことが、投資を長く続けるための土台になります。
投資で大切なのは、焦らず、自分のペースで進めることです。
最初は少額から始め、値動きに慣れながら少しずつ経験を積んでいけば、リスクに対する耐性も自然と高まります。
リスク許容度を見極め、自分に合った投資を続けていくことで、無理のない資産形成が実現し、やがて「投資を通じて未来をデザインする力」を身につけられるはずです。