~リスク・リターンって何だろう?~

資産運用や投資を始めるときに、よく耳にするのが「リスク」と「リターン」という言葉です。
これらは投資理論において非常に重要な概念であり、正しく理解することが、成功するための第一歩です。
本コラムでは、投資初心者にもわかりやすく「リスク」と「リターン」について解説し、さらに基本的なポートフォリオ理論にも触れていきます。
目次 [非表示]
1 リターンとは?
まず、「リターン」についてです。「リターン」とは、投資から得られる成果、つまり利益や損失のことを指します。
リターンは金融商品の価値変動やキャッシュフローによって生じるものであり、大きく分けて以下の2種類があります。
(1)キャピタルゲイン・ロス
これは、金融商品を購入してから売却するまでの間に発生する価格の差から得られる利益または損失です。
例えば、100万円で買った株を150万円で売れば、50万円のキャピタルゲインが得られます。
逆に80万円で売れば、20万円のキャピタルロスが発生します。
キャピタルゲインは特に株式投資や不動産投資で重要視されます。
(2)インカムゲイン
これは、投資している間に得られる利子や配当などの定期的な収益を指します。
例えば、株を保有していることで企業から支払われる配当金や、債券の利息などが該当します。
インカムゲインは特に債券投資や高配当株式の投資において重視されます。
リターンは投資の成果を測定する指標であり、リターンの大小を考慮する際には「期待リターン」という概念も重要です。
期待リターンとは、将来的に得られる可能性のあるリターンの平均値を意味し、確率分布に基づいて計算されます。
投資理論では、リターンを数値的に把握することで、ポートフォリオ全体のパフォーマンスを評価することができます。
2 リスクとは?
次に、「リスク」について説明します。
一般的な日常会話での「リスク」という言葉は、何か悪いことが起こる「危険性」を意味しますが、投資の世界ではより広義な意味で使われます。
投資における「リスク」は、「投資成果(リターン)が予想と異なる可能性」や「価格や損益がどれだけ変動するか」という、不確実性や変動幅のことを指します。
投資のリスクは、定量的に測定されることが多く、その代表的な指標として「標準偏差」が挙げられます。
標準偏差は、リターンの変動幅を示す指標であり、値が大きいほどリスクが高いとされます。
また、「ベータ値」という指標も存在し、市場全体に対する個別資産の変動感応度を測定するものです。
ハイリスクの金融商品、例えば個別株式や暗号資産(仮想通貨)などは、成功すれば大きな利益を得られますが、失敗すれば大きな損失を被る可能性があります。
一方、ローリスクの商品(例:国債やインデックスファンド)は、大きな利益は期待できませんが、損失を被るリスクも比較的少ないです。
3 投資におけるリスクの種類
投資にはさまざまなリスクが存在し、それぞれ異なる要因によって引き起こされます。
以下は代表的なリスクの種類です。
① 価格変動リスク
金融商品の価格が市場環境の変化によって上下するリスク。株式市場の変動や不動産価格の変動がこれに該当します。
② 信用リスク
企業や国が債務を履行できなくなるリスク。特に社債や国債において重要な要素です。
③ 流動性リスク
希望するタイミングで資産を売却できないリスク。流動性が低い商品は、取引量が少ないため価格変動が大きくなる傾向にあります。
④ 金利変動リスク
金利の変動によって債券などの価格が変動するリスク。特に長期債において影響が大きいです。
⑤ 為替変動リスク
外国通貨建ての資産を保有する際に、為替レートの変動によって価値が変動するリスク。
⑥ カントリーリスク
投資対象国の政治的・経済的な変化に起因するリスク。政情不安や法制度の変更などが該当します。
4 リスクとリターンの関係
リスクとリターンは相互に関連しており、一般にリスクを取ることで高いリターンを期待できます。
この関係は「リスク・リターンのトレードオフ」と呼ばれます。
ポートフォリオ理論では、異なる資産を組み合わせることでリスクを低減しつつリターンを最大化することを目指します。
また、「分散投資」の概念も重要です。
複数の資産に分散して投資することで、個別リスクを抑え、全体的なリスクをコントロールすることが可能です。
5 リスクの対処方法
投資を行う際には、さまざまなリスクが伴います。
特に株式投資は価格変動が大きく、短期的には大幅な下落を経験することもあります。
このため、リスクを恐れて安全性の高いローリスク・ローリターンの商品ばかりを選ぶと、資産を効率的に増やすことが難しくなります。適切なリスク管理を行いながら投資を行うことが重要です。
では、どのようにしてリスクに対処すればよいのでしょうか?
その答えのひとつが「分散投資」です。
(1)分散投資とは?
分散投資とは、異なる種類の資産や市場に資金を分散して投資することで、全体的なリスクを低減する方法です。これはポートフォリオ理論に基づくリスク管理の基本的な戦略であり、相関関係が低い資産を組み合わせることで効果を発揮します。
例えば、株式と債券を組み合わせると、株式市場が下落した際に債券が価格を維持または上昇することで損失を軽減できる可能性があります。
特に「逆相関」を示す資産を組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクを抑えることができます。
分散投資は、単一のリスク要因に依存せず、異なる経済環境や市場状況にも対応しやすくなる点がメリットです。
(2)分散投資の実例
日本の公的年金を運用する「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」は、分散投資の代表的な例です。GPIFは、日本株式25%、日本債券25%、外国株式25%、外国債券25%という分散ポートフォリオを基本とし、総合的なリスクを低減しながらも安定した運用利回りを実現しています。
GPIFの運用利回りは年平均3.75%〜4%程度であり、長期的な運用成果を上げています。
例えば、年利4%で毎月1万円を20年間積み立てると、元本240万円に対して約367万円に達します。
また、100万円を一括で20年間運用した場合、元本100万円が約222万円に増えます。
このように、分散投資はリスクを抑えながら安定的なリターンを得る手法として有効です。
(3)自分に合ったポートフォリオの作り方
投資において重要なのは、自分のリスク許容度に合わせたポートフォリオを構築することです。
リスク許容度とは、投資家が精神的および経済的に受け入れることのできるリスクの範囲を指します。
リスク許容度が高い人は株式などのハイリスク・ハイリターンの資産を多く取り入れることができますが、リスクを避けたい人は債券や預貯金などのローリスク資産を多く含めることが望ましいでしょう。
現代ポートフォリオ理論では、リスクとリターンのバランスを取るために「効率的フロンティア」という概念が用いられます。
これは、特定のリスク水準で最大のリターンを得られるポートフォリオの集合を示したもので、最適な資産配分を考える上で参考になります。
6 まとめ
投資を始める際には、リスクとリターンの関係を正しく理解し、自分のリスク許容度に合わせた投資戦略を立てることが重要です。
一般的に、リスクが高い投資ほど期待されるリターンも大きくなりますが、それに伴う損失の可能性も高まります。逆に、リスクが低い投資は大きな利益を期待しにくい反面、損失のリスクも抑えられます。
自分の投資目的や資産状況を考慮し、適切な商品を選び分散投資を実践することで、リスクをコントロールしつつ効果的に資産を増やすことができます。
リスクとリターンの関係を理解し、計画的な投資を行うことで、より安定した資産運用を実現しましょう。